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シン・ゴジラが壊す、アニメと実写の境界線

  • 中川 龍太郎(映画監督・脚本家)

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2016年10月5日(水)

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日経ビジネスオンラインでは、各界のキーパーソンや人気連載陣に「シン・ゴジラ」を読み解いてもらうキャンペーン「「シン・ゴジラ」、私はこう読む」を展開しています。
※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

 監督・脚本という立場で実写映画制作の一端に携わる一人として、アニメーションと実写映画の相克の歴史という観点から、『シン・ゴジラ』が何を達成したのか、その歴史的意義について書こうと思う。

 1954年に初めて東京に姿を現してから、時代の要請に合わせて幾度となく作られてきた。ゴジラはもはや、日本の映画界が誇る伝統であり、文化の一つと言っても過言ではない。これまでにも、初代ゴジラの本多猪四郎監督から始まり、「若大将シリーズ」で知られる福田純監督や大森一樹監督など、数多くの著名な映画監督たちがその才能を発揮し、ゴジラという題材に向き合ってきた。

1990年生まれ、26歳。慶應義塾大学文学部卒業。大学在学中に監督を務めた『Calling』がボストン国際映画祭にて最優秀撮影賞を受賞。『愛の小さな歴史』が2014年東京国際映画祭にて公式上映。フランスの映画批評誌『カイエ・デュ・シネマ』にて「包み隠さず感情に飛び込む映画」として評価される。2015年東京国際映画祭では『走れ、絶望に追いつかれない速さで』が公式上映され、2年連続での上映を果たす。同作は今年、一般劇場公開された。

 米ハリウッド版のゴジラ作品を除けば、日本版のゴジラ新作が公開されたのは2004年の『ゴジラ ファイナルウォーズ』(北村龍平監督)以来、実に12年ぶりとなる。邪推するならば、ゴジラの展開に行き詰っていたのかもしれない。

 この高い壁に満を持して挑んだのが、『シン・ゴジラ』の総監督を務めた庵野秀明監督だ(『シン・ゴジラ』では総監督という立場だが、映画監督としての庵野氏を扱うため、本稿では呼称を庵野監督と記す)。言わずと知れた『新世紀 エヴァンゲリオン』の生みの親である、アニメーション界の巨匠の挑戦だ。

 結果、70億円を超える興行収入を記録。歴代の日本版ゴジラシリーズの中ではトップに躍り出て、見事、「ゴジラ復活」を世に知らしめた。

アニメ映画監督による実写映画挑戦の歴史

 なぜ、『シン・ゴジラ』はここまでの大ヒットとなったのか。

 従来のゴジラ映画の「お決まり」を壊した作品だったからと言われる。恋愛や家族劇など個人のドラマの要素の一切を排して、徹底して現象としてのゴジラと、その対処にフォーカスを当てている。これまでのゴジラ映画の多くは、主人公のプライベートな物語が介在していた。比較すると、それら要素の排除は鮮明だ。ここまでの思い切った視点の転換は、旧来のゴジラには見られなかった。あるいは、現代においてこれまでのゴジラ映画の型がすでに通用しなくなっていたことの証左、とも言えるかもしれない。

 では、どうして庵野監督は新しい世界観を打ち出せたのか。個人的に、彼がアニメーション出身の監督だったという点が大きいように思う。

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