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防衛装備の海外展開に立ちはだかるハードル

2016年9月27日(火)

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 ゴジラが都内に侵入するのを防ぐため、多摩川を防衛ラインに据えた自衛隊の「タバ作戦」。映画「シン・ゴジラ」で描かれた自衛隊の総力戦で中核を担ったのが、川沿いに並んだ最新鋭の「10式戦車」だった。映画では、10式戦車が高速移動しつつ遠方の標的ゴジラに向けて砲弾を発射、命中させている。

 映画ではゴジラの侵入を防ぐことはできなかったが、自衛隊が8月に実施した富士総合火力演習では、10式戦車が大活躍し、日本の島嶼部に侵入した某国を殲滅させるのに“成功”した。

 映画で見せた、移動しながらの精密な射撃を実現するには高い技術力が必要だという。その性能の高さから「世界的に高い評価を得ている」と政府の関係者は話す。

シン・ゴジラに登場した「10式戦車」。日本製鋼所が砲身を国産化するのに成功した(写真:廣瀬 貴礼)

 10式戦車が備える高い性能を支える企業の一社が日本製鋼所だ。20世紀初頭から戦艦の主砲などを開発してきた防衛装備の「老舗」として知られる。金属素材から自社開発し、命中精度の高い火砲を製造できるのが強み。主体となって開発した「99式自走155mmりゅう弾砲」は世界トップクラスの命中精度を誇る。ちなみにこのりゅう弾砲もシン・ゴジラのタバ作戦に投入された。さらに海外メーカーからライセンスを受けて生産していた戦車用の火砲を内製化するのに成功。三菱重工業が開発した10式戦車に搭載された。

 「我々と組んで海外ビジネスをやらないか」。同社の技術力の高さに目をつけた防衛装備の海外大手メーカーから提携を求める声が舞い込むようになった。「(装備品移転の)門戸が開き、海外大手が日本の技術を目当てに押し寄せてきている」。日本製鋼所で防衛事業を手掛ける特機本部の新本武司副本部長はこう明かす。防衛装備移転三原則が2014年に閣議決定され、日本産の防衛装備を海外に輸出したり、共同開発に参画したりする道が拓かれた。ただ積極的に動き始めているのはむしろ海外の大手メーカーだ。

防衛関連企業は「宮大工」

 肝心の日本製鋼所は装備品の海外展開に二の足を踏む。これまで同社は国内のみ、さらに言えば防衛省としか取引してこなかった。このため、防衛装備を輸出するノウハウは持っていない。最新鋭の火砲にしても「防衛省と二人三脚で開発したもの。それを民間の判断で輸出していいのか。国益に適うのかという不安がある」と新本副本部長は語る。

 9月26日号特集「ニッポンの防衛産業」でも触れたように、防衛装備移転三原則が閣議決定されたからといって日本の防衛関連企業が製品を容易に輸出できるようになったわけではない。具体的な輸出スキームが固まっていないのが理由の一つだ。防衛省や経済産業省などに手続きについて一つひとつ確認する手間は膨大で、輸出のハードルは極めて高い。

 もっとも、日本製鋼所の特機本部はこのまま手を拱いていては技術を維持できなくなるという危機感を抱えている。10式戦車向け火砲の生産数は毎年20門に満たない。大規模な生産設備を導入しても投資回収のメドが立たないため、生産は人手に頼らざるを得ない。

 新本副本部長は「我々は(継承者の数が減少している)宮大工のようなものだ」と言う。その技術力を維持するためにどうすべきか、議論する時期が来ている。同氏は続けて指摘する。「輸出のスキームがきちんと決まれば、技術力を維持する手段として有効かもしれない。ただ民間企業だけで交渉して成立する話ではない。防衛装備が想定外の国の手に渡る可能性もある。国が主導する必要がある」。

コメント2件コメント/レビュー

ビジネスですから、負担を押し付け合い、技術を盗み合い、責任を押し付け合うことになると思います。そこで、先行者は、これが慣習だからと説明していなかったルールを持ち出すはずです。たとえて言うなら、何もわからないまま、麻雀に誘われて参加している状態になるのではと推測されます。騙されているのか、真実なのかわからない状態でどんどんコストがかさみ、捨て値で、技術と製品を放棄することを繰り返すのではないでしょうか。
巨大な損失を何度も繰り返して、その先の利益を掴む判断を今の株式市場が許容するかと考えると難しいと思います。その前に、まず、非上場企業になる必要があると思います。
航空機のMU-300のように売れなかった場合でも、それでも、次の製品を開発し、技術者を育成し続ける経営者の胆力と市場の大きさが必要だと思います。
リーマンショックの後、大規模なリストラをし続けた経営思想では、無理です。リーマンショックの後、大規模な投資と採用を続ける胆力と経営思想が必要です。
上場企業なので長期間の損失を覚悟した選択ができない、そして、兵器市場は縮小していることから、体力温存に注力し残存者利益を目指す方向が最適解だと思います。
シャープやパナソニックのように、大きく動いた会社が、会社存亡の危機を迎えます。兵器市場には、リスクを取る価値があるだけの市場規模があると思えません。(2016/09/27 10:56)

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「防衛装備の海外展開に立ちはだかるハードル」の著者

飯山 辰之介

飯山 辰之介(いいやま・しんのすけ)

日経ビジネス記者

2008年に日経BP社に入社。日経ビジネス編集部で製造業や流通業などを担当。2013年、日本経済新聞社に出向。証券部でネット、ノンバンク関連企業を担当。2015年4月に日経ビジネスに復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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ビジネスですから、負担を押し付け合い、技術を盗み合い、責任を押し付け合うことになると思います。そこで、先行者は、これが慣習だからと説明していなかったルールを持ち出すはずです。たとえて言うなら、何もわからないまま、麻雀に誘われて参加している状態になるのではと推測されます。騙されているのか、真実なのかわからない状態でどんどんコストがかさみ、捨て値で、技術と製品を放棄することを繰り返すのではないでしょうか。
巨大な損失を何度も繰り返して、その先の利益を掴む判断を今の株式市場が許容するかと考えると難しいと思います。その前に、まず、非上場企業になる必要があると思います。
航空機のMU-300のように売れなかった場合でも、それでも、次の製品を開発し、技術者を育成し続ける経営者の胆力と市場の大きさが必要だと思います。
リーマンショックの後、大規模なリストラをし続けた経営思想では、無理です。リーマンショックの後、大規模な投資と採用を続ける胆力と経営思想が必要です。
上場企業なので長期間の損失を覚悟した選択ができない、そして、兵器市場は縮小していることから、体力温存に注力し残存者利益を目指す方向が最適解だと思います。
シャープやパナソニックのように、大きく動いた会社が、会社存亡の危機を迎えます。兵器市場には、リスクを取る価値があるだけの市場規模があると思えません。(2016/09/27 10:56)

体制や環境がととのっていないのとは別に、海外に出るに当たっての一番の壁は実戦経験が無い事でしょうね。10式にしても、移動照準射撃を支えている多くのセンサーが、戦場下でどこまで維持できるのか。(2016/09/27 08:58)

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