「お客さんは服のブランド名なんて覚えてない」

短パン社長が語る、アパレル不振の原因と対策

アパレル不振の真因を突き止めた『誰がアパレルを殺すのか』
アパレル業界がかつてない不振にあえいでいる。大手アパレル4社の売上高は激減。店舗の閉鎖やブランドの撤退も相次いでいる。アパレル業界と歩みをともにしてきた百貨店業界も、店舗閉鎖が続き、「洋服が売れない」事態は深刻さを増している。

なぜ突如、業界は不振に見舞われたのか。経済誌「日経ビジネス」の記者が、アパレル産業を構成するサプライチェーンのすべてをくまなく取材した書籍『誰がアパレルを殺すのか』が今年5月、発売された。

業界を代表するアパレル企業や百貨店の経営者から、アパレル各社の不良在庫を買い取る在庫処分業者、売り場に立つ販売員など、幅広い関係者への取材を通して、不振の原因を探った。この1冊を読めば、アパレル産業の「今」と「未来」が鮮明に見えるはずだ。関連記事を随時連載していきます。

 いつでも短パンを履くその姿から、ついたあだ名は「短パン社長」。テレビなどでその姿を見かけた人も少なくないだろう。中小アパレル企業の異色経営者は、不振の業界をどう見るのか。

アパレル業界の不振の原因は、どこにあると見ていますか。

奥ノ谷 圭祐氏(以下、奥ノ谷):世の中にはたくさんの洋服のブランドがあって、どこに行っても似たような商品があふれています。

 そんな状況で、多くの消費者は「どのブランドでもいいや」と思うようになっていて、アパレル企業の名前も、ブランド名も、ほとんど覚えていません。「ユニクロ」や「ZARA」が登場して、普段着る服は十分間に合ってしまいます。つまり今の消費者にとっては、「衣」「食」「住」の中で、「衣」が最も後回しになっている。それが我々の業界の現状だと思います。

 専門学校を出て就職したアパレル企業で、あるブランドが大ヒットして、1年間で売り上げが何倍にもなるという光景を目の当たりにしました。

 その時、怖さを感じましたね。急成長した時期に、例えば6000円くらいだったTシャツを大量生産して、いきなり半額に下げたんです。

 有名人を使った大々的な販促をしながら、販路も広げて、一気に売り出した。当然、商品のクオリティは落ちて、ブランドの価値は下がった。けれども売り上げはどんどん上がっていきました。「これ、大丈夫かな?」と思っていましたが、やはり、そのビジネスモデルは長続きしませんでした。

奥ノ谷 圭祐氏(おくのや・けいすけ)。東京・渋谷の中小アパレル企業、ピーアイ代表取締役。いつでも短パンを履く「短パン社長」として、バラエティ番組などに出演。ファッション専門学校卒業後、ほかのアパレル企業勤務を経て2006年、家業であるピーアイに入社。2010年から現職。39歳。(写真:竹井俊晴)

「消費者の9割がユニクロ支持」の時代が来ている

業界全体が不振から抜け出せない中で、ご自身が経営しているような、比較的規模の小さいアパレル企業への影響は大きいのではないですか。

奥ノ谷:東京・渋谷を歩いている100人に、「あなたの好きなブランドは」と聞いたら、90人が「ユニクロ」と答える時代になっていくでしょう。

 10年後とか、そんな先のことではありません。一般的なアパレル企業は100人のうち20~30人とか、中途半端な数を狙っているように見えます。僕らは、そのうちの1人が熱狂的に好きになってくれれば、それでいい。最終的には、そんなクセのあるブランドや店しか残らないと思います。

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著者プロフィール

杉原 淳一

杉原 淳一

日経ビジネス記者

2005年、日本経済新聞社に入社し、大阪経済部に配属。2009年に東京に異動し、経済部で銀行や農林水産省、財務省、金融庁などを担当。2015年4月から日経ビジネスで金融機関を中心に取材している。

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