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「アパレル業界は、タイタニック号のよう」

カリスマ編集者、軍地彩弓が語る「変わる消費者、変われぬ業界」

2017年6月13日(火)

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アパレル業界がかつてない不振にあえいでいる。大手アパレル4社の売上高は激減。店舗の閉鎖やブランドの撤退も相次いでいる。アパレル業界と歩みをともにしてきた百貨店業界も、店舗閉鎖が続き、「洋服が売れない」事態は深刻さを増している。

なぜ突如、業界は不振に見舞われたのか。経済誌「日経ビジネス」の記者が、アパレル産業を構成するサプライチェーンのすべてをくまなく取材した書籍『誰がアパレルを殺すのか』が今年5月、発売された。

業界を代表するアパレル企業や百貨店の経営者から、アパレル各社の不良在庫を買い取る在庫処分業者、売り場に立つ販売員など、幅広い関係者への取材を通して、不振の原因を探った。この1冊を読めば、アパレル産業の「今」と「未来」が鮮明に見えるはずだ。関連記事を随時連載していきます。

 アパレル業界はなぜ不振から抜け出せないのか──。その理由について、業界で著名なカリスマ編集者・軍地彩弓氏に意見を聞いた。長年、ファッション誌の最前線で活躍してきた軍地氏は、スマートフォンの普及や東日本大震災の影響で大きく変化した消費者の購買行動を指摘し、その変化に直面しながら改革の動きが鈍い大手アパレル企業の現状を嘆く。

アパレル業界の不振の理由について「若い人を中心に、服を買わなくなった」という意見が多いのですが、この見方に付いてどう思いますか。

軍地彩弓氏(以下、軍地):例えば今、20代に聞くと、「ビンテージが好き」という子が多いです。メルカリが登場してから、誰かが着たものにも抵抗が少なくなり、リユース・リサイクルが当たり前になっています。

 若い人の収入が伸びず、デフレも進行していますね。1990年頃、「スーツが4万9800円で安い」と雑誌に書いていた記憶があります。それが今やトータル1万円でも高いと言われます。

 でも、それ以上に現状を象徴しているのが、「欲しいものがない」と言っている子が多いという点です。

 スマートフォンを見たり、ユーチューブを見たりという時間の使い方をしています。スマホによって同世代で共有する情報が少なくなり、「買わなければいけない」というものがなくなっていきました。リーマンショック前までは「アムロちゃん(歌手の安室奈美恵氏)になりたい」「あゆ(歌手の浜崎あゆみ氏)になりたい」というブーム先行型のトレンドがありました。でも、スマホ時代は個人の嗜好の細分化が進み、同世代で共有する記憶がないから、共有の消費も生まれない。

 昔は「アメカジ」とか「渋カジ」とか、雑誌が提案してブームに名前を付け、それによって可視化され、広く共有され、というある種のサプライチェーンが成立していました。

 スマホの大きな特徴が、「時制がない」ことです。過去記事も最近の記事も、一緒のレベルで語られてしまいます。「今しかない、限定商品です」という文言が心に響かず、「これは絶対に買わなければ」という動機付けがありません。その証拠に、セール以外で女性は行列を作らなくなりました。

 個々人のスタイルが磨かれるようになるなど良い面も多いですが、共有化された情報に基づく消費を前提としていた売り場がいきなり立ち行かなくなっているというのが、現在のアパレル不振の一因ではないでしょうか。

軍地彩弓氏(ぐんじ・さゆみ) 大学在学中から講談社でライターとしてのキャリアを積み、「ViVi」編集部に。雑誌「GLAMOROUS」の立ち上げなどに尽力し、コンデナスト・ジャパンを経て2014年に株式会社gumi-gumiを設立。現在は雑誌「Numéro TOKYO」(扶桑社)のエディトリアルディレクターを務める。2016年、経済産業省「アパレル・サプライチェーン研究会」のメンバーを務めた。

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「誰がアパレルを殺すのか」のバックナンバー

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「「アパレル業界は、タイタニック号のよう」」の著者

染原 睦美

染原 睦美(そめはら・むつみ)

日経ビジネス記者

日経パソコン、日経ウーマンオンラインを経て、2013年4月から日経ビジネス記者。IT担当などを経て、日用品・化粧品担当。趣味は洗濯、昼酒、ピクニック。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

杉原 淳一

杉原 淳一(すぎはら・じゅんいち)

日経ビジネス記者

2005年、日本経済新聞社に入社し、大阪経済部に配属。2009年に東京に異動し、経済部で銀行や農林水産省、財務省、金融庁などを担当。2015年4月から日経ビジネスで金融機関を中心に取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官