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英EU離脱、知られざる金融機関最大の「被害者」

ロンドンから欧州への拠点移設が相次ぐ

2017年7月26日(水)

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 英国では、テリーザ・メイ首相の予想外の総選挙敗北から約2カ月半が経とうとしている。

 6月29日、保守党の施政方針が英国下院で可決された。メイ首相は総選挙で10議席を獲得した民主統一党 (DUP)との閣外協力を経てようやく少数与党政権樹立に至ったものの、英国のEU(欧州連合)離脱=ブレグジットを巡る状況は選挙前とは一変した。

 保守党内では、メイ首相のリーダーシップに対する不満がくすぶり続けている。一方、野党第一党の労働党は勢いを取り戻し、保守党への攻勢を強めている。EU離脱に向けて、英国内が一枚岩になっているとはとても言えない状況だ。

 混乱する政治情勢の下、頭を抱えているのが英国に拠点を置く国際企業だ。英国のEU離脱に向けた道筋がますます不透明になり、将来の事業戦略を描くのが一層困難になっている。特に金融機関は、その悩みが深い。現在EU加盟国である英国の金融規制は、当然ながらEUと同じ。英国としては、離脱後も英国で認可された金融機関がEU単一市場へのアクセス(金融パスポート)を得ることが、ブレグジット後に考えられる最良な方法と主張している。

 しかし、メイ首相は、単一パスポートなどよりも、移民の管理を優先する「ハード・ブレグジット」路線を主張していた。メイ首相の強硬な姿勢はEU側の反発を招き、離脱後は英国の金融機関の単一パスポートは失効する可能性が高い。このため、ロンドンの金融街、シティに拠点を置く金融機関の多くが、2017年第3四半期ごろまでにロンドンから他のEU加盟国の金融都市に拠点・事業を移転するか否かの決断をすると見られていた。

 既に欧州での移転先も集約されつつあり、(1)アムステルダム、(2)ダブリン、(3)パリ、(4)フランクフルト、(5)マドリードなどが主要候補として検討されていた。この他米国や香港、シンガポールに移転するケースも想定されている。

ロンドンからの金融機関の移転候補先
(出所)http://www.d-maps.com/、各種報道により大和総研作成

 ところが、今回の総選挙で強硬離脱を主張していた保守党が敗北したことで、メイ首相は従来のハード路線を修正せざるを得なくなっている。単一パスポートを巡る判断も、軟化されるのではないかとの期待が高まっていた。

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「英EU離脱、知られざる金融機関最大の「被害者」」の著者

菅野 泰夫

菅野 泰夫(すげの・やすお)

大和総研ロンドンリサーチセンター長

1999年大和総研入社。年金運用コンサルティング部、企業財務戦略部、資本市場調査部(現金融調査部)を経て2013年からロンドンリサーチセンター長。研究・専門分野は欧州経済・金融市場、年金運用など。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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