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大塚家具騒動で、一体誰が得をしたのか?

父と娘の争いから1年、騒動の本質が見えてきた

2016年3月30日(水)

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3月25日、大塚家具の株主総会が開催された。今年の総会の所要時間は60分足らず。株主からの反対提案はなく、大塚久美子社長を含む取締役の選任など3議案が賛成多数で承認された。振り返ってみると、1年前、同社の株主総会はテレビのワイドショーを賑わした。焦点となったのは、「情」に訴えた父・勝久会長(当時)と「理」を説いた娘の久美子社長との争いだった。最終的に、株主から久美子社長が経営者としての評価を集めたのはなぜだったのか。今、改めて検証する。

 大塚家具の経営権を巡る父・会長と長女・社長の争いで、いったい誰が得をしたのだろうか──。

 刑事モノのテレビドラマで、真犯人を割り出すのはたいがい、「誰が得をしたか」をヒントに推理を組み立てていく名刑事である。2015年の2月25日夜に突然、大勢の幹部社員を引き連れて記者会見を開いた父・大塚勝久会長(当時)のド派手なパフォーマンスは、テレビのワイドショーの格好のネタになり、連日の報道合戦へとつながった。刑事ドラマで言えば、犯罪などの衝撃的な場面から始まったのと同じだった。

 たまたま早い段階からこの問題を取材する巡り合わせになった筆者は、この記者会見の後あたりから、「この騒動で誰が得をするのだろうか」と考え続けてきた。テレビで「父娘喧嘩」「骨肉の争い」と連呼されれば、普通なら大塚家具という会社のイメージは悪化し、人々の怨嗟の的になりそうなものだ。ところが、この騒動を通じて、大塚家具の知名度は飛躍的に上がり、株価も大きく上昇した。

昨年2月26日には久美子社長が中期経営計画を発表し、勝久会長(当時)との情報戦を繰り広げた(写真:菊池一郎、以下同)

 娘の大塚久美子氏が社長として経営権を固めてからも、「謝恩セール」や「売り尽くしセール」を打つと、大勢の人が開店前から行列した。テレビでお馴染みとなった美人社長をひと目見ようという、にわか久美子ファンまで誕生。もちろん、騒動前に比べて、がぜんメディアの関心も高まった。騒動は決してマイナスに作用しなかったのだ。

 それはいったいなぜなのだろうか。

どこの家でも起こりうる事例だった

 大塚家具という上場企業を舞台にした騒動だったものの、決して特殊な事例ではなく、「どこの家庭にもある話」「どこの家族経営の企業でも起こる話」だと多くの人が感じたからにほかならないだろう。「悪い子を作った」と嘆いてみせた勝久氏の父親像に自分を重ねたり、逆に上場企業を担おうとする久美子氏の「働く女性像」に共感したりする女性も多かった。人ごととは思えない「騒動」だったからこそ、多くの人たちが一気に引き込まれていったのだ。

 今、世の中では、「跡継ぎ」をどうするかで悩む人たちが増えている。それは旧来の「家」でも、家族経営の「会社」でも同じだ。誰に家を継がせるか、どの子に会社を譲るか。そもそも少子化によって跡継ぎが生まれないということもある。かといって兄弟姉妹の数が多ければ、それはそれでトラブルになる。

 長男が跡を継ぐ「一子相伝」が当たり前だった時代はとっくに過ぎ去り、兄弟平等、男女同権が当たり前になったことが、事態をさらに複雑にしている。終戦から70年たち、世の中が豊かになったことで、親世代が大きな財産を残すようになったことから、相続や事業承継は単に形だけでなく、経済的な利益も絡むようになった。つまり親子という「情」の問題だけでは容易に解決できなくなっているのである。

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「大塚家具騒動で、一体誰が得をしたのか?」の著者

磯山 友幸

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

ジャーナリスト。1962年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞で証券部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め2011年3月末に独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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