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インダストリー4.0で自社の工場が丸裸になる!?

第3回:森を観察するより枝を剪定せよ!

2016年5月16日(月)

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 近年、欧米の様々な経営学者の戦略論が台頭しています。その影響からか、森ばかりを見て木を見ない遠視眼的な経営に陥り、バランスを欠いているケースが少なくありません。戦略論は必要ですが、「自社の商品・サービスにどういう価値をつけてどう売るのか」というマーケティングの要素も重要なのです。

「シェアNo.1を取れなければ市場から撤退する」
「5フォースの分析では……」
「ブルーオーシャンの状態をつくらなければならない」
「バリューチェーンはこうなっていて……」

 最近、企業内におけるミーティング、あるいは、新聞や雑誌のインタビュー記事などでよく使われるフレーズです。語られていることは確かに重要なのですが、何か薄っぺらい感じが否めません。私の指導先企業でも、こういった戦略論的な用語が頻繁に出てきます。こうした分析・思考が不要であるわけではないのですが、もっと大事なことを忘れているのです。それは「考えている商品・サービスにどんな魅力をつけてどう売るのか」という基本的な視点です。

 肝心の商品・サービスのクオリティーが低ければ、現状のシェアがいくら高くても、シェアNo.1をどうこう言う前にシェアを落としてしまうでしょう。立派な5フォース分析を行っても、競争力を確保することは難しいでしょう。あるいは、いくら優れたバリューチェーンを考えたとしても、商品・サービス自体の力がなければ、それは机上の空論となってしまいます。要は、ビジネスを行っていく上で最も大事な「イロハ」の部分が欠けたまま、戦略論ばかり語られているのです。

「介護業界は宝の山」という嘘

 こういった現象がよく現れるのが、「介護」「農業」「ロボット」「IoT(モノのインターネット)」「クラウド」といった成長分野をターゲットにしたビジネスです。例えば、介護業界について考えてみると、

・高齢化時代を迎え、市場全体が拡大する
・介護施設などにヒアリングすると、細かいニーズがたくさん出てくる
・それを基にして新製品開発を行う

 という戦略を立てて実践している企業は少なくありません。ところが、このケースにおいてもイロハが欠如しているのです。

 顧客ニーズを拾って、それをベースに製品を開発しているわけですから、一見売れそうに思えるのですが、大きな落とし穴があります。「どう売るのか」という部分が欠如しているのです。

 商品・サービスを売るというプロセスにおいて、重要なプレーヤーは「選定者」と「購入者」と「使用者」です。選定者とは、商品・サービスの内容、特長を吟味して、選ぶ立場にある人のことです。購入者とは、実際にお金を出す人です。そして使用者とは、それを実際に使用する人のことを言います。

 介護業界は、これら3人のプレーヤーがバラバラであるケースが多いのが特徴で、それがビジネスを難しくしています。

 例えば、最近よく話題となる、介護施設入居者向け介助ロボットについて考えてみます。介助ロボットは、手足の動きなどが不自由になった際、それをアシストしてくれるような機器です。人型ロボットの形態をしたもの、グローブのようなものなど様々な製品が登場しています。

 あなたが介助ロボットメーカーの営業担当者だとすると、誰をターゲットに営業活動をするでしょうか。まず、思いつくのが選定者です。では、このケースの選定者は誰になるでしょうか。実はケアマネージャー(ケアマネ)が選定者になるのです。ケアマネとは、患者さんの介護保険をどういった内容で使っていくかというプランを策定する人です。当該ロボットが介護保険適用の商材だとすると、レンタルベッド、入浴介助などと同じように、介護プランに入れてもらう必要があるのです。

 問題はここからです。実は、このケアマネは、極めて接触するのが難しく、仮に使用者である患者さんを捕まえたとしても、その先の選定者であるケアマネが全く捕まらないのです。つまり、3プレーヤーの重要なキーパーソンである選定者に届きにくい(リーチしにくい)ビジネスということになるのです。

 いくら成長業界であり、そこでシェア云々を語り、5フォースを分析し、バリューチェーンを考えたとしても、選定者へのリーチが難しいという致命的なビジネスモデルの欠陥を抱える可能性があるのです。つまり、こういった細かい要素を考えずに、「将来的に伸びる介護業界」×「ロボット技術」という構図だけで市場に参入するのは、まさに森ばかりを見て木を見ない遠視眼だけの考えであり、ブームに乗せられた浅い思考といえます。

■介護業界における製品とキープレーヤー

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「インダストリー4.0で自社の工場が丸裸になる!?」の著者

高杉 康成

高杉 康成(たかすぎ・やすなり)

コンセプト・シナジー代表取締役

神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA)。キーエンスで新規事業・新商品グループチーフなどを務めた後、独立。高収益の実現を目標に、新規事業・新商品開発、提案営業力強化などの収益力改善を指導している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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