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日本人なのに書を知らないのはいかがなものか

2016年1月30日(土)

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 日本人なのに書を知らない、あるいは、書に興味がわかない。そう思ったことはないか。絵や仏像が見られる展覧会には出かけても、書だけの展示となるとなかなか足が向かない…そんな人もいるのではないだろうか。そんな人間が自分だけならいいのだが、という自戒を込めた話だ。

 もっとも、書は日本の伝統技法とはいえ、日常生活で筆を持つ機会はほとんどない。小中学校の書写・書道の時間のほかには必修科目として学ぶ機会もあまりない。こんな現代の教育事情を考えれば、書への親しみが薄くても、ある程度はやむをえないことかもしれない。

 しかし、それはあまりにももったいないことである。書はもともと中国から伝わった。だが、文学や絵画と同じく、日本の中で独自の展開をし、極めて魅力的な表現を花開かせた文化だからだ。

 こうして書のことを改めて考えたのは、東京の出光美術館で開かれている「書の流儀」という展覧会で、書の見方をとても丁寧に紹介しているのを見たからである。書への愛をも感じる展示だったといったら大げさに聞こえるかもしれない。だが、書を見る喜びを共有しようという気概にあふれていたように感じたのだ。

 担当学芸員は同館の笠嶋忠幸さん。大学時代に書を学び、『日本美術における「書」の造形史』(笠間書院)などの著作を持つ、書の研究者だ。同館では笠嶋さんの企画で「文字の力・書のチカラ」という展覧会を2009年からシリーズで開いており、今回はその3回目である。

書を風景として楽しむ

 筆者の目を開いてくれた数々の展示作品の中で、特に注目したのは、桃山から江戸時代を生きた僧侶で能書家の松花堂昭乗の「水草下絵三十六歌仙和歌色紙」だ。画面は約20センチ角。昭乗は、金泥で水草が描かれた料紙の上に三十六歌仙の一人、中納言朝忠の和歌をしたためている。

松花堂昭乗「水草下絵三十六歌仙和歌色紙」(桃山時代、出光美術館蔵)

 あふ事のたえてし
 なくはなかなかに
 人をも身をも
 うらみさらまし

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「日本人なのに書を知らないのはいかがなものか」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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