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なぜ鳥は空なのか? 脳を裏切るマグリットの「絵空事」

2015年6月20日(土)

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 「絵空事」。この言葉の存在は、絵に描く内容に、実在しない場面やできごとが多いことを物語る。実際、白鳥に化けたギリシャ神話の主神ゼウスがスパルタ王の妻に横恋慕する場面を描いた西洋絵画(多くの西洋の画家が描いた《レダと白鳥》)や、米俵が空を飛んで行く日本の絵巻物(《信貴山縁起絵巻》)など、架空の場面を描いた作品は、洋の東西にかかわらず多い。そうした表現には、SF映画を見たときのような楽しさがある。

 ベルギーの画家、ルネ・マグリット(1898~1967年)が描いたのも「絵空事」といえる。しかし、今挙げたような「絵空事」の数々とはなにかが違う。東京・六本木の国立新美術館で開催中の「マグリット展」には、シュルレアリスム(超現実主義)の画家として知られるマグリットの初期から晩年までの約130点の作品が展示されている。これほど多数の作品が揃ったのは13年ぶりという。貴重な機会なので、マグリット独自の「絵空事」の深みをのぞきに出かけ、楽しみ方を改めて考えてみた。

 例えば、この展覧会で展示されているマグリットの《野の鍵》(出品は東京展のみ)。15世紀、ルネサンス時代のイタリアで、貝から生まれたヴィーナスを描いたボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》と、何が違うのだろうか。

1936年、80×60cm、油彩/カンヴァス、ティッセン=ボルネミッサ美術館 Museo Thyssen-Bornemisza, Madrid
© Charly Herscovici / ADAGP, Paris, 2015
© Photothéque R. Magritte / BI, ADAGP, Paris / DNPartcom, 2015
※東京展のみ出品

 先に《ヴィーナスの誕生》について考える(画像はウェブで簡単に検索できるだろう)。ボッティチェリがこの名画に描いたのは神話、つまり物語の一場面である。貝から女神が生まれる場面を目撃するのは、現実世界では困難だ。しかし、神話の世界に鑑賞者が自分の身を投じ、意識を没入すれば、それは実際に“起きた”出来事ととらえることも可能だ。そもそも宗教絵画の目的は、神話をビジュアル化して現実味を与えることともいえる。聖職者たちが信者たちに「神の世界では、昔こんなことがあったんですよ」と説く。説く方にとっても説かれる方にとっても、描かれている内容に嘘という認識はないはずだ。

 一方の、マグリットの《野の鍵》。外の景色が眺められる窓が、室内のやや引いた位置から描かれている。ただし、まるで外から投げ込まれた石かボールが当たって事故が起きたかのように、何らかの理由で窓ガラスが割れている。描かれた部屋の窓ガラスは透明なので、閉まっていたとしても、外の景色は普通に見えたようだ。ところが、割れる前に見えていたであろう外の景色がそのまま、室内に飛び散りつつあるガラスの破片に映っている。窓外の景色が窓と一緒に崩れ落ちるということは、神話の世界でもありえないことだろう。

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「なぜ鳥は空なのか? 脳を裏切るマグリットの「絵空事」」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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