「No Museum, No Life?」と題した展覧会が東京・竹橋の東京国立近代美術館で開かれている。聞き覚えのある響きを持つこの言葉がどういう意味なのか、ふと考え込んだ。
「美術館なくしては生きられないのではありませんか?」
日本語訳はこんなところだろうか。展覧会を開く当の美術館が発信するには、なかなか大胆な物言いだ。しかし、こうした言葉遊びは楽しむにかぎる。美術館に3日足を運ばないと、いても立ってもいられなくなるような人……。筆者が美術関係の仕事をしているということもあるが、そういう知人が確かにいる。美術館にはそうしたディープな人間を生み出すだけの魅力があるということは、少なくとも知人を見る限り言えるのである。
展覧会の正式タイトルは、「No Museum, No Life? これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」。日本国内の国立美術館5館(国立西洋美術館、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館、国立新美術館)の所蔵品から選んだ作品や資料で構成する企画展だ。5館が共同で展覧会を開くのは、2010年以来5年ぶり。東京国立近代美術館の加茂川幸夫館長はプレス内覧会で「国立館の持つお宝がたくさん集まった」ことを強調していた。
タイトルを裏読みすると、美術館が存在意義を自ら問うていることになる。通常の企画展とはかなり趣を異にした、工夫を凝らした内容であることは間違いない。
たとえば、裸婦図ばかりがぎっしりとまとまって壁にかかっているコーナーがある。クールベの《眠れる裸婦》(国立西洋美術館)、萬鉄五郎の《裸体美人》(東京国立近代美術館)、甲斐庄楠音の《毛抜》(京都国立近代美術館)など作家名を見てもなかなか豪華だ。裸婦図がたくさん出ている展覧会はほかにもありそうだが、これほど意図的にぎっしり感を出した展示は珍しい。
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