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ルノワールはなぜ豊満な裸婦を描いたのか

2016年7月16日(土)

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 ルノワールは、裸婦をよく描いた。《陽光のなかの裸婦》は、モネと一緒に光をカンバスに描きとめる方法を探求していた1870年代の作品。裸婦図は、スキャンダラスとは言わないまでも官能性を伴うことがしばしばある。だが、光の表現に成功した、あまりにみずみずしいルノワールの画面はそんなことを感じさせない。

《陽光のなかの裸婦(エチュード、トルソ、光の効果)》
(1876年頃、第2回印象派展出品作、オルセー美術館蔵)展示風景

 東京・六本木の国立新美術館で開かれている「ルノワール展」の会場を訪れると、《陽光のなかの裸婦》は比較的最初のほうの展示空間で目にすることができる。ルノワールはこの作品に見られるような光の表現の探求を、この絵を描いた5年後くらいにはやめてしまう。会場で改めて作品と向き合うと、それがもったいないと思えるくらいに、作品自体が輝いていた。

 それでもやはり、ルノワールは光そのものよりも裸婦を表したかったのではないか、という反論もあるだろう。それもおそらく間違ってはいない。だからこそ、裸婦はルノワールの終生のテーマになるのだ。

印象派は実は写実志向

 この展覧会には、ルノワールが晩年に描いた裸婦の代表作が展示されている。出口近くの展示室にある《浴女たち》だ。2人の大きな裸婦がクローズアップされた背後に、水浴をしている3人の裸婦が小さく描かれている。

《浴女たち》
(1918~19年、オルセー美術館蔵)展示風景。マティスはこの作品をルノワールの代表作ととらえたという

 《陽光のなかの裸婦》とは、描きぶりがまったく違う。《浴女たち》の裸婦は、とにかく豊満だ。胴体のあたりが、ふっくらした巻き貝型のパンのようにだんだんになっている。この作品を一緒に見たあるプレス関係者は、「どこが魅力かが分からない」と言った。

 印象派の絵画は、茫漠と描かれているように見えて、実は写実志向だ。やや距離を置いて眺めると、色が混ざって見えたり、立体的に見えたりするように描かれている。先日、知人が撮影した横浜の港の夕暮れの風景写真を見た時に、さざ波、船、遠くの建物、海面に映った太陽など画面のほぼすべての要素が、モネの《印象・日の出》と酷似していることに気づいた。

 昨年秋から今年にかけて全国を巡回している「モネ展」で来日したことでも話題になったこの作品は、描き方が粗く見えることから当時「印象」という言葉を使って批判され、それが印象派の名前の由来となったことで知られる。しかし、モネとしては印象を描きとめたわけではなく、実際に見えた「光景」を忠実に描こうとした写実志向の作品だったことを、知人の写真を見て納得した。日の出や日の入りの時間帯の光は、実際に目に映る光景を茫漠とさせるのである。

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「ルノワールはなぜ豊満な裸婦を描いたのか」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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牛島 信 弁護士