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天使になった音楽記号とは?~パウル・クレーの謎解きの旅へ

2015年8月8日(土)

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 愛らしい天使の線描画で知られるスイス出身の画家、パウル・クレー(1879~1940年)は、無類の猫好きだったという。

 「クレーは家で何匹もの猫を飼い、絵のモチーフにしたばかりではなく、人間の目を描くときにも眼球に縦のスリットを入れた猫目の作品をいくつも残しています」

《子猫ちゃんのひとり言》(1938年、29.9×20.9cm、紙に鉛筆、厚紙に貼付、ベルン、パウル・クレー・センター、リヴィア・クレー寄贈 ©Zentrum Paul Klee c/o DNPartcom)

 こんなことを教えてくれたのは、宇都宮美術館で開催中の「パウル・クレー だれにも ないしょ。」展で企画を担当した石川潤学芸員だ。巧みであることから離れた童画のような画風、色面で構成した純粋抽象、繊細でセンスを感じさせる線描など、クレーは実に多彩な表現を展開した。これほど画風が千変万化する画家はそうはいないのではないか。一方、一度描いた絵を切断し、それぞれの断片を別々の作品にしたり配置を変えて再構成したりすることも多々ある。

 1万点近くの作品群は、膨大なアイデアとインスピレーションの宝庫と言っていい。それゆえにまた、それぞれの画面に込められた意味は測りがたく、多くの謎を秘めているのである。人間に猫目を入れたのは、豊富な発想がうごめく心の中からすっと顔を出した表現の一つだったのだろう。

音楽を絵画の中で表現する

 「パウル・クレー だれにも ないしょ。」展は、そうした謎の解き明かしを試みた企画だという。スイスの首都ベルンのパウル・クレー・センターから多数の出品があり、展示室を歩くと、謎めいた表現の波間に身を浴すことができる。

 最初の展示室でおもむろに出てきた謎のモチーフは、音楽記号のフェルマータだった。楽譜上で音符の上にこの記号があるときは、演奏者の感覚でその音を自由な長さに伸ばすことになる。クレーはたくさんの絵画作品の中に、フェルマータと思しきモチーフを描いている。

音楽記号:フェルマータ

 クレーは画家を目指す以前、11歳の時すでに出身地ベルンのプロオーケストラの団員(非常勤)になるほど達者なヴァイオリン奏者だった。ヴァイオリンを習い始めたのは7歳だったというから、よほど才能があったのだろう。画家に転向してからも音楽を捨てたわけではなく、培った経験を絵画に生かそうとした。たとえば、同じ動きのメロディをずらして重ねるフーガという音楽形式を、絵画のモチーフのずれによって表現したり、和音と色の調和のイメージを重ね合わせたり。ドイツの美術、デザイン、建築の総合専門学校バウハウスで教鞭を取った時には、音楽理論を美術の表現に生かすことを追究している。いわば、音楽のエッセンスをいかにして絵画の中で表現するかを探究した画家だったのだ。

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「天使になった音楽記号とは?~パウル・クレーの謎解きの旅へ」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師