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ジャコメッティはいったい何を見たのか

2017年8月19日(土)

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 アルベルト・ジャコメッティ(1901〜66年)の彫刻は、作品の大小にかかわらず小枝のように細い印象を与える。芸術が破天荒な創造に向かった近代以降の個性的な表現の一つであることには間違いないが、やはり不思議である。

 たとえば、画家のフェルナンド・ボテロは、ボリュームたっぷりの人物描写がとても愛らしく、魅力的だ。ルノワールも一部の裸婦像をかなりふくよかに描いている。ただ、彼らの描いた人物像は、現実の人間でもありえる太さだ。

 一方、ジャコメッティの細さは尋常ではない。あのプロポーションの人体に胃や腸や心臓などの臓器や肋骨などを含む骨格を収めるのは、どう考えても無理である。とはいっても、針金で人間をかたどったようなオブジェとも違う。細いにもかかわらず厚みが確実にあること、さらには肉体が存在することを感じさせる。

《大きな女性立像II》(1960年、ブロンズ、サン=ポール・ド・ヴァンス、マルグリット&エメ・マーグ財団美術館蔵)展示風景 高さ276センチの大作
《小像(女)》(1946年頃、ブロンズ、メナード美術館蔵)展示風景 高さ3.3センチの小さな立像

 それゆえ、「生きている人間を彫刻にした!」というリアリティーが頑として存在している。国立新美術館で開催中の「ジャコメッティ展」は彫刻や絵画で作家の生涯を通覧する内容だが、会場を歩くと多くの作品で細さの個性を貫いていたことが分かる。

 ジャコメッティについては、デッサンにまつわる大変興味深い逸話が残されている。1950~60年代に合計228日にわたって数度訪れたパリで作品のモデルを務めたという哲学者の矢内原伊作が、著作の中で、ジャコメッティが絵を“見えるがままに描きたい”と言っていたことに言及しているのだ。

コメント1件コメント/レビュー

ジャコメッティの細長い人物彫刻は、古代エトルリアの彫刻の影響を受けたとも言われていますね。
実際、学芸員の妻が私の実家にあるエトルリア彫刻のレプリカを見たとき、最初はジャコメッティの稚拙な模倣だと思ったそうです(妻の名誉のために付け足しておくと、妻の専門はルネッサンス初期のイタリア及び現代美術です)。
スイスのイタリア語圏出身だったジャコメッティは、もしかしたら自らをエトルリア人の末裔と任じていたのかもしれませんね。(2017/08/19 08:44)

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「ジャコメッティはいったい何を見たのか」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

ジャコメッティの細長い人物彫刻は、古代エトルリアの彫刻の影響を受けたとも言われていますね。
実際、学芸員の妻が私の実家にあるエトルリア彫刻のレプリカを見たとき、最初はジャコメッティの稚拙な模倣だと思ったそうです(妻の名誉のために付け足しておくと、妻の専門はルネッサンス初期のイタリア及び現代美術です)。
スイスのイタリア語圏出身だったジャコメッティは、もしかしたら自らをエトルリア人の末裔と任じていたのかもしれませんね。(2017/08/19 08:44)

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