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火薬で人生を描いた蔡國強

2015年8月29日(土)

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 「火薬絵画」という耳慣れないジャンルの絵を制作する美術家がいる。2008年の北京五輪開会式で花火の演出を担当した蔡國強(さい・こっきょう)だ。世界各地で火薬を使って作品の制作を続けている。横浜美術館で開催中の「蔡國強展:帰去来」にも、「火薬絵画」の新作が出品されている。

 火薬の爆発を絵の技法にするという発想がユニークだ。エンタテインメント系のショーのように、爆発そのもので演出効果を上げようというわけではない。爆発の様子や花火が打ち上がったところを風景として描くのとも異なる。蔡は紙の上に置いた火薬に火をつけて小さな爆発を起こし、生じた痕跡を、絵の具のように使っているのだ。

 作品を前にすれば、それが爆発の跡であることが分かる。周囲に飛び散るような形で焦げ跡が焼きついているからだ。それゆえ、本当の爆発が生み出した迫力がある。一方で、従来の絵の具のような細密なコントロールができない部分も出てくる。それも暴れ馬のような迫力につながっている。いわば、アンコントローラブルな迫力とでも言うべきだろうか。

 横浜美術館の展示では、いくつかの新作で新境地を見せている。まず目に入るのは、エントランスホールの吹き抜け空間に展示された大作《夜桜》。同館に滞在して制作した新作である。画面を大ぶりの花びらが埋めている。左上に大きなみみずくが描かれているのが印象的だ。横山大観の同名の作品を意識して描いたという。巨匠へのオマージュである。

《夜桜》展示風景より。みみずくの描写が印象的だ

 みみずくは大観が描いた画題の一つでもあった。しかしそれ以上に気になるのは、みみずくの厳しい顔つきだ。やはり大観が描いた初期作品《屈原》の厳しい顔にイメージが重なる(この作品はネットで簡単に検索できるだろう)。大観は屈原に、東京美術学校の校長を追われ、苦境に立った日本画界のリーダー、岡倉天心の姿をだぶらせたとも言われる。蔡が描いたみみずくは、明治中期の日本画界を象徴しているのかもしれない。

 火薬で描いたことにより、凄みが出ている。桜も、大観の作品のよう樹木全体に美しさをたたえているわけではなく、むしろ普通はクローズアップされることのない花びらのひとひらひとひらが存在感を放っている。強い作品だ。

《夜桜》展示風景より。花びらはおおぶり。日本の画家が描く桜とは存在感が違う

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「火薬で人生を描いた蔡國強」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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