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銀河系を俯瞰し、マンハッタンに花を咲かせる

美術家やデザイナーは風景に何を見ているのか

2015年11月21日(土)

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 広島市現代美術館で開催中の「俯瞰の世界図」展で、驚くべき映像作品に出会った。

 スクリーンは床に、映写機はその真上にある。最初に映るのは、芝生の上にほぼ正方形のレジャーシートを広げ、寝転んでくつろぐ男女のカップル。見ていると、上空から撮影しているカメラのズームの倍率が急激に小さくなったかのように、カップルたちの姿が小さくなる。

チャールズ&レイ・イームズ《パワーズ・オブ・テン(10の乗冪)》が展示されている一角(「俯瞰の世界図」展 展示風景。提供:広島市現代美術館。撮影:花田憲一)

 気付くと画面には米国全体が映っている。「カメラ」はさらに引く。そのうちに地球全体、さらには太陽系、ついには銀河系全体が映し出される。

 一転、「カメラ」はズームアップモードに移り、再びカップルの映像が現れたかと思いきや、今度は男性の手を、皮膚を、細胞を、はては素粒子の動きと思われる光景まで、どんどん拡大しながら、見せ続ける。マクロからミクロまでをシームレスに映し出す。さながら、宇宙の果てにあるカメラで天文学的数字の超高倍率のズームレンズを使ってファインダーを覗いているかのようだ。

 この映像作品には、さらに驚くべき2つの要素がある。1つは制作年代。1968年に第1作が、77年にこの展覧会で展示している第2作が作られた。衛星から地球を撮影した写真や実写モードのインターネット地図を見慣れた現代人にとっても新鮮だ。1960~70年代に、宇宙と細胞を行き来するような発想があったことに脱帽する。

 もう一つの驚くべき要素とは、作者がチャールズ&レイ・イームズという夫婦で活動していたデザイナーだったことだ。作品名は《パワーズ・オブ・テン(10の乗冪)》。1メートル、10メートル、100メートルと、画面には常に正方形とその1辺の長さ、そしてそれが10の何乗メートルかを表示している。スケールを確認しながら見られるようにしたのが、作品名の由来なのだろう。イームズといえば椅子などの家具が有名だ。生活に密着した世界に生きるデザイナーが、日常とかけ離れた表現を試みること自体、興味深い。

 地球や銀河系を外から見ること自体が、「俯瞰」をキーワードにしたこの展覧会の内容にぴったりなのだが、イームズの作品はさらに、その概念が細胞や原子といったミクロな世界でもものを言うことに気づかせる。

 「俯瞰」という行為は実に魅力的である。広い範囲を上から見渡すのは、近代以前はおそらく、たまに山や高台に登った時などに経験する程度だったはず。たとえばいわゆる「下界」を眺め渡す行為が快感であることは、今の時代でも高層ビルや塔の展望台が人気を呼んでいることからも明らかだ。一種、神の気分を味わうように感じる向きもあるだろう。

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「銀河系を俯瞰し、マンハッタンに花を咲かせる」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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