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杉本博司の昔と今を読み解く

中谷美紀と千宗屋を迎えた美術家のもてなしとは

2015年12月5日(土)

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 何の変哲もない海の風景になぜこれほど惹かれるのか。

 現代美術家、杉本博司の銀塩写真による「海景」シリーズは、近年折りに触れて見る機会が増えているが、まったくといっていいほど見飽きることがない。千葉市美術館で開かれている「杉本博司 趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」展でも、数点が並べて展示されており、またしてもじっくり見てしまった。前に立つと目を凝らしたくなるような何かを持っているのだ。

《カリブ海、ジャマイカ》(1980年 © Hiroshi Sugimoto/ Courtesy of Gallery Koyanagi)

 モノクロームの画面に写っているのは、水平線で空と二分割された海の風景。それ以外には何もない。陸地も、船も、太陽も、クジラも、かもめも登場しない。天気も穏やかだ。荒れた海なら多彩な変化を見せるはずだが、海面は平らである。あえて日常的な姿の海を撮っていることが推察される。

 しかし、というよりも、だから、と言うべきだろう。海が見せる豊かな表情に感心するのだ。杉本は、隅々までしっかりと海面を“描写”している。海は凪いでいたとしても、潮の満ち引きや海流などのために常に動いている。だから常にざわめいている。あるいは、海を地球の皮膚のように見なすことも可能だろう。たとえば一人の人間の皮膚が場所によってすべて異なる表情を見せるのと同じように、まるで生命のような一面を、杉本は写真を通してあらわにし、その意外性が目を吸い寄せ、愛着を湧かせるのである。

「海景」シリーズ展示風景

 さらに興味深いのは、世界各所の海をまったく同じ構図で撮っていることだ。それらは、まったく同じ顔をしていてもおかしくないのに、ことごとく違う表情を見せている。

 季節や気象によって異なる顔を見せる海を表現するのに「表情がある」という言葉を使えば、誰しも納得するだろう。「穏やかだったり、怒り狂っていたり」というたとえを、海が見せる変化に当てはめることにも、おそらく多くの人が賛成するに違いない。

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「杉本博司の昔と今を読み解く」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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