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法規制だけではマンション傾斜は止められない

【番外編】明治大学特任教授・田村誠邦氏に聞く

2015年10月30日(金)

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施工不良が発覚した「パークシティLaLa横浜」

 三井不動産レジデンシャルが2006年に販売した「パークシティLaLa横浜」の4棟中の1棟が傾斜した問題が、日本中の注目を集めている。自分自身もマンションに住んでいるが、「建物、建築のことは我々は何も知らない。日々暮らしている自分のマンションのことでさえ」、と、大規模修繕委員を務めてみて、つくづく思い知った。

 何も知らない住人にとって、修繕を成功させるキモは現場の管理者にあり、それをどう見抜くかだ、という話を書いていこう、と考えていたら、いきなり傾斜マンションの問題が。これは修繕の話どころではない…と思いきや、問題点は実は似たところにあるようなのだ。

田村誠邦(たむら・まさくに) 明治大学理工学部特任教授、博士(工学)、1級建築士/不動産鑑定士、アークブレイン代表取締役
1977年東京大学工学部建築学科卒業。三井建設、シグマ開発計画研究所を経てアークブレインを設立し現在に至る。2010年4月に明治大学理工学部客員教授に就任し、2012年4月より同特任教授。マンション建替え・建築再生等、各種建築プロジェクトのコンサルティング、コーディネイトが専門。2008年日本建築学会賞(業績)受賞。2010年日本建築学会賞(論文)受賞。著書多数。

いま、マンションの大規模修繕委員になってしまった体験記を日経ビジネスオンラインに書いているのですが、実感として思ったのは、「結局、全ての補修作業を常に見張る事なんて、現場監督にも、もちろん自分にも出来っこない」ということなんです。

田村誠邦氏(以下田村):仕事にはそういう面があります。もちろん、建設会社だって、現場の責任者が全部管理するわけにはいきません。下職(したしょく、現場で実際に作業に当たる職人さん)の人にどうしても任せなければならないところがある。

連載で伝えるべきはそこだなと思っていまして、現場の職人さんたちが手抜きを「する気にならない」だけの指導力や関係性を作れるような、経験、知識、胆力のある現場監督を捕まえられるかどうかが、修繕工事のカギでしょうね、と。


田村:そう、建築の場合も工事の品質は、実は請け負う会社の社名ではなくて、現場の所長さん次第なんですよ。とはいっても、修繕ならばコンペで現場監督さんの人柄を見ることもできるけれど、分譲の場合はできあがったものを買うわけで、どんな人が作ったかは分からない。正直言って、買う方はチェックのしようが無い。

修繕も建築も、カギは現場の所長(監督)

でも、現場監督が施工に与える影響は大きいわけですよね。そこが、電気製品や自動車などと、建築物が違うところで。マンションは液晶テレビを買うのとはワケが違う。それが、修繕の体験を通して初めて分かりました。

田村:その通りです。工場で作ったものならば決まった検査もできる。建築物は、もちろん検査はするんですが、杭打ちひとつとってもすべてのクオリティについて完全にチェックというのは現実にはできない。工事をやった業者、作業者の、自主的な意識、「きちっとやるよ」というモラルにかかっているというのは免れ得ないです。これを第三者が確認しようとすると、そのためにどんどん膨大な人員が必要になってきます。

その上、工事はやたら多いわけですよね。

田村:やたら多い…と思われますか。でも、それは、大きな誤解なんです。

えっ、そうなんですか?

田村:建築着工面積の推移を調べると、ピークは1996年で、2億5800万平米。それが2014年には、1億3100万平米。1億2700万平米減っている。最近一番下がったのはリーマンショックの後、2009年で、そこからは増えてます。だけどピーク時に比べれば半分近く下がっているわけです。2013年までは上昇基調でしたが、それでも1億4800万平米で、ピーク比4割以上のマイナスです。それでも、いまおっしゃったように「人手が足りない足りない」と業界は言っているんですけれど、建設業就業者数の推移はどうでしょうか。

着工面積ほど減っていない就業者数

田村:こちらはピークが1997年で685万人。それが2014年では505万人。ピーク時の73.7%で、3割も減っていない。工事量より人員の減少のほうがずっと少ないんですよ。これは、建設業の生産性が落ちたということです。(注:以上の数字は国土交通省「建築着工統計」、総務省「労働力調査」より)

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