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日本の再生医療にノーベル賞の呪縛

iPS細胞はスタンダードになれるのか

2015年7月24日(金)

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 「我々の研究開発はiPS細胞(人工多能性幹細胞)より10年は先行している。日本ではiPS細胞が脚光を浴びているが、この差は歴然とある」

 今年4月、東証マザーズに上場したバイオベンチャー、サンバイオの森敬太社長はこう強調する。

 サンバイオが手掛けるのは「細胞医薬品」という治療方法。人の体内にある組織幹細胞という治癒能力を持つ細胞を取り出し、その能力を高める遺伝子を注入した上で、細胞を患者の体内に入れる方法だ。2001年に米国で創業した同社は現在、現地で脳梗塞治療の臨床試験を進めている。森社長によれば、実用化の時期は近づいているという。

 富士フイルムは今年5月、約370億円でiPS細胞の製造を手掛ける米バイオベンチャー、セルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)を買収。その結果、iPS細胞の分野で中心的存在である、山中伸弥教授が率いる京都大学を追い抜き、トップランナーと目されるようになった。

 だが、あくまで現時点での評価は、iPS細胞に関するものにとどまる。病気や事故で損なわれた細胞・臓器の機能を回復させる再生医療の分野全体を見渡せば、ライバルとなる技術が先行している。その代表例が細胞医薬品だ。

 細胞医薬品の優位点はいくつかある。サンバイオは1人のドナーの骨髄から採取した細胞を使い、約2か月間で数千人分の細胞医薬品を作り出す技術を持つ。他人の細胞を注入しても、免疫の拒絶反応やがん化のリスクが起きる可能性はほとんどないという。そのため、比較的低コストでの治療が実現できるとされる。注射剤の注入という治療方法であるため、既存の製薬企業の販売ルートを活用できる利点もある。iPS細胞を使った組織・臓器の移植と異なり、職人的な専門技術は必要ない。こうした現状を踏まえ、森社長はiPS細胞を使った技術と「差がある」と指摘しているのだ。

再生医療の分野ではiPS細胞以外のライバル技術が先行している
方法特徴主な企業取り組み内容
ES細胞(胚性幹細胞)人の発生初期段階に受精卵の一部から作製。無限に増殖し、すべての細胞に分化する多能性を持つが、受精卵に手を加える点に対し倫理的な問題がある米オカタ・セラピューティクス、米アドバンスト・セル・テクノロジー加齢黄斑変性など目の難病治療で臨床試験を実施
米アステリアス・バイオセラピューティクス米スタンフォード大学と共同で脊髄損傷を治療する治験を実施予定
英国立幹細胞バンク30種類以上のヒトES細胞を冷凍保存し、研究機関などへ提供
組織幹細胞体の中にある組織から採取。分化の範囲は限定的だが、腫瘍化の可能性は低い米ステムセルズ死亡した他人の胎児由来の神経幹細胞を使い、脊髄損傷を治療する治験を実施
サンバイオ他人の骨髄由来の間葉系幹細胞を使い、脳梗塞や外傷性脳損傷を治療する臨床試験を実施
Muse細胞体の中にある間葉系幹細胞から採取。増殖能力は低いが、多様な組織に分化する三菱ケミカルホールディングス2016年度に急性心筋梗塞の治療で臨床試験を実施予定

 iPS細胞と競合する技術は細胞医薬品だけではない。受精後1週間前後の受精卵の一部を使って作製するES細胞(胚性幹細胞)もその1つ。iPS細胞と同じく、あらゆる細胞・臓器に分化、成長できる「多能性」と、ほぼ無限に増え続ける「自己増殖性」という2つの機能を持つ。

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「日本の再生医療にノーベル賞の呪縛」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師