
熱気はピーク。日本企業の進出ラッシュに沸くシリコンバレーの「今」と、成功の「掟」を、日経ビジネス7月27日号の特集「沸騰シリコンバレー みんなの攻略ガイド2015」で報じた。IT・ネット企業に限らず、製造業、飲食、メディアとあらゆる企業がシリコンバレーを目指している。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、昨年、サンフランシスコを中心とするベイエリアの日系企業数は719社となり、調査開始以来、過去最高だった。ここに、モノのインターネット化「IoT」ブームと、政府の後押しが追い風となり、日本企業の熱気は増すばかりだ。
かつては考えられなかった新しいカタチの進出も増えてきた。その筆頭が、福山太郎氏が米サンフランシスコで起業した、福利厚生のアウトソーシングを手掛ける米AnyPerk(エニーパーク)だ。日本のメディアには滅多に登場しない「知られざる」ベンチャーの軌跡を追った。
5月1日朝、米サンフランシスコ。訪米中の安倍晋三首相は、シリコンバレーで活躍する日本人を招いた朝食会に顔を出した。
「この若者は、米国に来た当初、家がなくて、(飲食チェーンの)『タコベル』の駐車場に停めたクルマに住んでいて……」。オーガナイザーが「彼」を安倍首相に紹介すると、出身中学高校がたまたま同じだったということもあり、話が弾んだ。

タコベルの若者は、福山太郎氏(27歳)。今となっては、シリコンバレーで最も名の知られる日本人の起業家だ。日本とシリコンバレーの関係が新たなフェーズに入ったことを示す象徴とも言える。
「Yコンビネーター」の門をくぐった唯一の日本人
2012年に福山氏がサンフランシスコで創業した米AnyPerk(エニーパーク)は、新興企業向けに福利厚生のアウトソーシングサービスを提供する会社で、同分野ではトップシェアを誇る。社員1人当たり毎月5~10ドルを支払うと、顧客企業の社員は携帯電話やケーブルテレビ、映画館、ショッピングセンターなどで15~30%程度の割引を受けられる。
創業からわずか3年で、特典を提供する企業はTモバイルUSなど200社以上となり、それらを享受する顧客企業は1000社を超えた。多くがシリコンバレーの新興企業で、米ザッポスやピンタレストといった著名企業も含まれる。
サンフランシスコの著名なベンチャーに勤める米国人エンジニアは言う。「ミキタニさんやラクテンのことは、経営者クラスは知っていてもエンジニアは知らないことが多い。でも、タローやエニーパークのことは、シリコンバレーで働く多くのエンジニアが知っている」。
福山氏はシリコンバレーでは誰もが知る著名な起業家育成機関「Y Combinator(Yコンビネーター)」の卒業生。そのことも、知名度や評価を後押ししている。
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