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リーマンショック後、ドラッカーブームが起きたのはなぜか?

2015年8月21日(金)

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目的志向と手段志向

 今日の支配的な経営観は、「目的志向」の経営です。まず目的ありきであり、そしてその目的を最も効率良く達成するための手段や行動を選択するというパラダイム(価値観、世界観)です。特に米国企業において主流の経営観です。

 目的志向的な経営観の代表としては、経営学者のドラッカーを挙げることができます。ドラッカーが説いていることは典型的な目的志向・目的重視です。例えば1993年の著書『ポスト資本主義社会』(ダイヤモンド社)の中で、企業などの「組織」が、社会、コミュニティー、家族と異なる点として、組織は目的志向の機関であることを示しています。しかも組織は1つの目的に集中して初めて成果を上げるとまで強調しています。

 そしてドラッカーは、企業という組織の目的は「顧客の創造」に尽きるということを繰り返し説いています。ドラッカー理論の根幹には、まず目的を明確に定めることなしには始まらないという目的志向があるのです。

 一方、日本企業が大切にしてきた掃除や5Sは、「手段志向」の世界に属するものです。手段そのものを大切にするのが手段志向です。まず手段があり、状況や時代の変化によって生じた新たな問題をその手段によって解決しようとしたり、その手段を活用できる新たな目的を見出したりしていくというパラダイムです。日本企業には、必ずしも自覚的でないかもしれませんが、この手段志向の経営観が染みわたっています。

 掃除にしろ5Sにしろ、始めるときには何らかの目的があります。そして「大事なことだから続けよう」ということになって、いつしか目的意識が薄れてくることさえあります。しかしながら目的を完全に忘れてしまうのではなく、むしろ新しい目的を加えていく。それが手段志向です。

 では、目的志向と手段志向の関係はどうなっているのでしょうか。それが拙著『そうじ資本主義 日本企業の倫理とトイレ掃除の精神』における重要なテーマでした。

悪戦苦闘して得るもの

 ちなみに日本人の経営者やビジネスマンには、ドラッカーが好きな人が少なくありません。その理由を考えてみると、日本人が手段志向であるがゆえに、逆に目的の重要性を説くドラッカーに刺激を受けるのかもしれません。

 手段志向の経営では、時に目的を忘れたり見失ったりすることがあります。特に不況に見舞われて業績が急激に悪化したりすると、「自分たちはどうすればいいのか」「自分たちは何を目指してきたのだろうか」などと戸惑ってしまうような状態に陥りがちです。そういう苦境期にドラッカーの言葉は日本人の心により響くのではないでしょうか。リーマンショックによる大不況に見舞われた2009年頃に、ドラッカーが日本で大ブームになったのには、そういう一因があるのかもしれません。

 ただしドラッカーは、顧客創造を究極の目的にした企業が本当に高収益企業となっているのか、これらについてのデータを必ずしも体系的に提示しているわけではありません。しかし1つの簡潔な結論を断定的に示してくれているドラッカーの教えは、経営者にとっては暗闇の中の灯火になってくれます。

 手段志向の経営は、経営者や管理者がそれぞれに実践をし、自らその意味を深く考えたり目的を新たに提示したりしていく必要性があります。悪戦苦闘をしながら独自に獲得したものだからこそ、少なくない従業員の心をとらえることができるのです。

 そしてドラッカーは、試行錯誤の連続の末に得るものを分かりやすい明快な言葉で提示してくれていると位置付けることもできるでしょう。模範解答例を先取りして示し、日本の経営者の心をとらえてきたのがドラッカーだったというわけです。

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「リーマンショック後、ドラッカーブームが起きたのはなぜか?」の著者

大森 信

大森 信(おおもり・しん)

日本大学経済学部教授

城西国際大学経営情報学部ならびに福祉総合学部専任講師、東京国際大学商学部助教授を経て、現職。著書に『トイレ掃除の経営学』(白桃書房)、『毎日の掃除で、会社はみるみる強くなる』(日本実業出版社)などがある。大阪商工会議所「掃除でおもてなし研究会」座長。同会主催のセミナーは、大阪商工会議所始まって以来の最大参加者900人を集めた(2013年)。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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