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ワクチンを巡る科学とお金の微妙な関係

<ワクチンの処方箋・その2>

2015年11月5日(木)

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(写真:ロイター/アフロ)

 11月になりました。そろそろ、会社でもインフルエンザワクチンの集団接種が始まるころですね。インフルエンザは低温と乾燥を好むので冬場を中心に流行します。インフルエンザワクチンは十分な免疫が得られるようになるまでに接種から3~4週間かかるため、流行シーズンの始まる1カ月前には接種を終わらせます。早い年では12月のうちに流行が始まることもあるため、集団接種は11月中旬くらいまでには終わらせるのが一般的です。

 今年のインフルエンザワクチンの特徴については、今後、本コラムなどでお伝えしていくつもりですが、今回はワクチンサイエンスとビジネス、そして公衆衛生との微妙な関係についてお話ししたいと思います。

 ワクチンをはじめとする医薬品の開発には膨大な開発資金がかかります。

 効果が高く安全性の高い医薬品をこの世に出すためには、一流の研究者と厳密に管理された研究開発施設が必要。つまり、テクノロジーだけでなくお金もかかるのです。しかも、人と施設がそろったからといって安全で効果の高い医薬品が簡単に作れるわけでもありません。そこをスタートに、効果と安全性の確認が繰り返し行われ、そこからまた膨大な時間とお金がかかります。

 特にワクチンは「生物学的製剤」にあたるため、通常の医薬品とは異なり、特殊な審査と検定に合格する必要があります。

 「ワクチン学の父」といわれ、ワクチン学のバイブルと呼ばれる “Vaccines”(第6版は1500ページ超あります!)の編者でもある、スタンレー・プロトキン医師はこう言っています。

 「大学の研究室やラボではシードを作ることは可能であっても、いまやメーカーの開発力や洗練された施設なしにワクチンを製造することは不可能だ」

 今年、ノーベル生理学・医学賞を取った大村智氏も米製薬大手のメルクとの共同研究で感染症治療薬を開発し、その業績をたたえられたことは象徴的です。医薬品やワクチンの開発には厳密なサイエンスが求められる一方で、資本主義の原理にのっとったビジネスとしての側面が必要とされていることが分かります。世界ではワクチンに携わる医師や研究者が、大学、行政、NGO、国際機関、そして、メーカーへと場所を移しながらワクチンの研究や評価、政策などに携わることはごく当たり前となっています。

 企業は、一流の研究者を囲い込んで優れたワクチンを開発し、ワクチンキャンペーンをはり、ロビー活動を展開してワクチンをいち早く世に出すために膨大な資金を惜しみなく投じます。

 安全性が十分に確立していないワクチンを世に出せば、健康な人に被害を与え、会社も甚大な損失を被るばかりか、メーカーの信用問題、ひいてはワクチン政策の是非の問題にもつながるので、治験に治験を重ね、効果が高く安全なワクチンをつくることは必須です。

 健康な人に投与して病気を予防するために用いられるワクチンは、一般の治療薬とは異なり簡単に必要性が理解されづらいため、医師や専門家を巻き込み、公衆衛生学的見地からの啓蒙活動をすることが珍しくありません。

 公費助成や定期接種化はメーカーにとって売り上げを左右するポイントであり、コストを抑えて安定供給を実現するためにも必要なので、政策向けのロビー活動も実施されます。

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「ワクチンを巡る科学とお金の微妙な関係」の著者

村中 璃子

村中 璃子(むらなか・りこ)

医師・医療ジャーナリスト

一橋大学出身、社会学修士。北海道大学医学部卒。都立高校中退。WHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局の新興・再興感染症チーム等を経て、現在、医療問題を中心に執筆中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官