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健気なお年寄りがひどい目に遭うニッポン

高齢弱者を狙い撃ちする“外道犯罪”の実態

2015年9月14日(月)

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 「どうせ頭が悪いから詐欺に引っかかったんだろう。自己責任だ」「老人はお金をたんまりと蓄えているのだから、多少はいいんじゃない」

 高齢者を狙い撃ちする「オレオレ詐欺(振り込め詐欺)」。社会問題としてクローズアップされる反面、被害者に対する世間の目は厳しいのが現実だ。特に、若い世代には「自業自得」だと突き放した意見を持っている者が少なくない。

 自分たちが将来受け取るであろう年金は、今の高齢者の受給水準から大幅に下がることは確実だ。そんな世代間格差に対する詮方ない不満が、高齢世代への冷ややかな攻撃性の根底にあるのだろう。そうした世相が影響しているからか、近年、オレオレ詐欺の被害者が親族からの冷たい目に晒され、羞恥心や生活困窮から自殺するケースすら起きている。

 オレオレ詐欺を含む特殊詐欺の被害件数は、昨年だけで過去最悪となる559億円に上った。だが、数字の裏に隠れた「実態」に目を向けて欲しい。記者は2015年9月14日号特集「あなたに迫る 老後ミゼラブル」を通じ、オレオレ詐欺の被害者数人を取材した。いずれも、「自業自得」と放擲するには、余りにも弱々しく、ささやかに生きる健気な方ばかりだった。

 そんな一人が、米沢まさ子さん(83歳、仮名)だ。東京都多摩市内の最寄り駅から少し離れた閑静な住宅街の中で、場違いにぽっかりと残る、古びた市営住宅の1LDKに一人で住んでいる。

 米沢さんが被害に遭ったのは今年5月中旬のこと。犯人グループに、計430万円をだまし取られた。

「消費者センターの者ですが…」

 「消費者センターの者ですが、調べていることがあって米沢さんに電話しました」

自宅にかかってきた電話が悲劇の始まりだった

 5月14日午前、1本の電話を受けた。消費者センターは以前、健康器具のクーリングオフについて相談に乗ってもらったことがある。その時点では、家に電話がかかってきてもおかしくない相手だと、特に不審に思わなかった。

 話の続きを聞くと、「東日本大震災の被災地支援として、あなたの代わりに3000万円を寄付した人がいる。その人に連絡をとってほしい」と告げられた。米沢さんは以前、被災地支援で30万円を個人的に寄付していた。その話と混同しているのではないか、そう思った。

 その後、弁護士、そして代わりに寄付をしたという男性から立て続けに電話がかかってきた。要件は「立て替えた3000万円のうち1000万円分だけでも返してほしい」という内容だった。

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「健気なお年寄りがひどい目に遭うニッポン」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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