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日本企業にありがちな、シリコンバレーへの誤解

最終回 日本がシリコンバレーをうまく活用するには

2015年11月9日(月)

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 しかしこれらの試みは、しばしば困難に突き当たり、結局はシリコンバレー進出を諦めてしまう例も多かった。例えば、大企業の多くはベンチャー投資からの直接収益よりもシリコンバレー企業との戦略的パートナーシップの可能性を重視する傾向が強かったために、他のベンチャーキャピタルが投資しないような低収益の案件に投資してしまったり、いったん投資すると不採算事業の可能性が高くなっても、それだけではなかなか撤退の決断ができないという問題を引き起こしたりした。

 また、日本でIPO(新規株式公開)を済ませてからシリコンバレーに進出を図るスタートアップもあるが、こうした企業はIPOによる投資利益の実現機会をすでに使い果たしているため、シリコンバレーのベンチャーキャピタルから見ると魅力に欠けるものになる。そのため、シリコンバレーでの資金調達に苦労するばかりでなく、資金を受け入れれば同時にアクセスが可能になるような人的ネットワークからの恩恵も、受けられないことになる。

 シリコンバレーにおける産業、大学、政府間の交流ネットワークへの参加には、多くの日本企業が力を注いできた。特にスタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校には、日本大企業の多くが研究プロジェクトへの参加などを通じて、積極的に関わってきた。しかし最大の問題は、大学に派遣された人達が接した新技術を日本の会社がどのように活用できるかということにある。

持ち帰った知見が宝の持ち腐れに

 大学に派遣されるのは企業の研究開発部門に属している人たちが多いが、日本に帰国しても、経営戦略や人事政策を担当する部署の支援がないために、大学で得た知見が研究開発部門に止まってしまい、ビジネスにつながらないという例がよく見られる。

給与格差をどうするか

 また、高度の人材を求めてシリコンバレーに進出する日本企業は、金融面以上に大きな課題に直面しがちだ。まず、シリコンバレーと日本の給与体系に違いがありすぎる。シリコンバレーで採用した人材に現地の市場レートでの高給を払ってしまうと、日本で採用された日本人従業員が不公平と感じてしまう。また、逆にシリコンバレーで採用された人材にとっては、会社のトップが基本的に日本からの派遣者で占められているので、内部昇進の機会がないように見え、その結果、彼・彼女たちを長く引きとめるのが難しくなるという問題がある。

 労働・人的資本面でのこれらの問題は、日本での人材管理の慣習が変わらない限り、解決が難しいように見える。

 これらの課題に加えて、日本の本社の経営陣がシリコンバレーの実情に疎いことに起因する問題もしばしば指摘される。例えば、シリコンバレーに派遣されている社員が、既存のビジネスを大きく変える可能性を持ったスタートアップ企業についての情報を日本の本社に送ると、本社はその会社の現在の市場規模、予測される市場規模、現在のプレーヤー、市場シェアといった情報を決まって問い合わせてくる。

コメント2件コメント/レビュー

このシリーズを読む限りでは日本がシリコンバレーを真似するのは止めた方が良いということになりそうです。政府のやっていることは理想をかかげてをお金を出すだけなので効果は期待できません。お金に群がる人はたくさんいるでしょうが、政府が掲げた理想を目的にする人はいないからです。まず補助金は止めて欲しいと思います。補助金を出すだけでは無理なのは明白です。もし、何かお金が必要なら大企業にでも出させるべきでしょう。お金はきちんとリターンのあることに使う。国が使うお金は必要なインフラ整備に限るべきです。政府がやるべきこととしては、アメリカの政府がシリコンバレーを作るのに何をしたかが参考になるかもしれません。ただし、日本は日本のやり方でやる必要があります。要はイノベーションを産み出す環境を整えることが目的なのでシリコンバレーを真似するのが必ずしもその答えではないと思います。(2015/11/09 19:30)

「ポスト高度成長:日本型イノベーション政策の検証」のバックナンバー

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「日本企業にありがちな、シリコンバレーへの誤解」の著者

星 岳雄

星 岳雄(ほし・たけお)

米スタンフォード大学教授

1983年東京大学教養学部卒。88年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学のPh.D.取得、米カリフォルニア大学教授をへて2012年から現職。専門は金融論、日本経済論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

岡崎 哲二

岡崎 哲二(おかざき・てつじ)

東京大学大学院経済学研究科教授

1981年東京大学経済学部経済学科卒業、86年、同経済学博士。同年から東京大学社会科学研究所助手、89年から東京大学経済学部助教授。96年、米スタンフォード大学客員研究員。99年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

このシリーズを読む限りでは日本がシリコンバレーを真似するのは止めた方が良いということになりそうです。政府のやっていることは理想をかかげてをお金を出すだけなので効果は期待できません。お金に群がる人はたくさんいるでしょうが、政府が掲げた理想を目的にする人はいないからです。まず補助金は止めて欲しいと思います。補助金を出すだけでは無理なのは明白です。もし、何かお金が必要なら大企業にでも出させるべきでしょう。お金はきちんとリターンのあることに使う。国が使うお金は必要なインフラ整備に限るべきです。政府がやるべきこととしては、アメリカの政府がシリコンバレーを作るのに何をしたかが参考になるかもしれません。ただし、日本は日本のやり方でやる必要があります。要はイノベーションを産み出す環境を整えることが目的なのでシリコンバレーを真似するのが必ずしもその答えではないと思います。(2015/11/09 19:30)

今更言うまでもなく権限移譲が必要。失敗に寛容でない許容性のない日本ムラ社会の慣習が、日本企業にも蔓延しているからこそ、自ら失敗出来ない過大な責任感に襲われ、日本本社に決定を委ねてしまうのであろう。(2015/11/09 12:50)

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