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香港、「反中」書店関係者相次ぎ失踪の謎

言論・出版の自由を制限か

2016年1月6日(水)

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店主はじめ関係者5人が失踪した銅鑼灣書店。閉じたシャッターには、身を案じる客が寄せたメッセージがぶら下がる

 世界のハイブランドファッションの店や人気レストランが軒を並べる香港の繁華街、銅鑼灣。目抜き通りには、高級デパートとして香港の人にも人気が高い「そごう」がそびえ立ち、連日、客でごった返している。

 そのそごうの裏手にひっそりと建つ雑居ビルの2階にある小さな書店が今、世界から注目を集める存在になっている。

 「銅鑼灣書店」

 香港で中国政府に批判的な書籍を出版、販売する書店として知られている。この書店の店主や親会社の従業員、株主ら5人が滞在先のタイや中国・広東省で相次ぎ失踪する事件が発生し、波紋を広げている。中国の公安当局の関与を疑う声が上がり、香港の民主派政党の議員や支持者らは3日、真相究明を求めて抗議デモを行った。一方、中国外務省の報道官は4日の会見で、「状況について把握していない」としてコメントを差し控えた。

 香港行政のトップである梁振英行政長官は4日に会見を開き、「報道、出版、言論の自由は香港の法律で守られている」と話し、警察に対して捜査を指示したことを明かした。

香港で拘束して本土へ連行か

雑居ビル入り口のショーウインドウには、書店が薦める新刊の表紙が並ぶ

 事の発端は昨年10月下旬、銅鑼灣書店の親会社の幹部が訪問先のタイで失踪。それから1週間のうちに、同社のほかの幹部や銅鑼灣書店の店長が中国本土の広東省で立て続けに失踪。事件発生から3カ月近く経つが、いまだに消息は分かっていない。

 そして昨年12月30日、銅鑼灣書店の株主で、作家でもある李波氏が行方不明になった。同日の午後に香港の書店で「倉庫に行ってくる」と店員に伝えた後に失踪。当日の夜、李氏から妻に、「調査に協力をしている。騒ぎ立てないでほしい」という電話がかかってきた。李氏の妻は電話の発信元の番号が本土の広東省深セン市だったと香港メディアは伝えている。

 3日に李氏の直筆の手紙が妻のもとへ届いた。そこには「自分の意思で中国本土へ行って調査に協力している」「帰るまでには少し時間がかかる」などと書かれていたという。

 だが、この手紙に香港の民主派政党である民主党の涂謹申(ジェイムス・トウ)氏や新民党の田北辰(マイケル・ティン)氏は現地のラジオ番組で「李氏は常に、中国本土へ行くことを拒んでいた。そんな彼が本当に自分の意思で行くだろうか」と疑問を呈している。

 香港警察によると、李氏が香港から出た記録はない。また、妻の証言によれば、香港で永住権を持つ住民が中国本土へ渡る際に必要な「回郷証」(中国公安局が発行するIDカード)は自宅に置いたままだという。自身の意思で渡ったとするならばIDカードは家から持参するのが当然で、越境の記録も警察が確認できているはずである。

 香港の地元メディアのサウスチャイナ・モーニング・ポストは「彼が書いたとされる不可解な手紙は、答えよりもさらなる疑問を生んだ」と紹介。手紙が脅されて書いたものではないかとする見方も現地では出始めている。

 これらの話を総合すると、李氏が香港で身柄を拘束されて中国本土へ連行されたとの観測も納得できる。となれば、中国本土の公安当局が香港で拘束した可能性が高い。中国に返還後も香港には高度な自治が認められており、中国本土の警察権は香港には及ばない。もし、この推測が現実のものであれば、高度な自治が侵されたことを意味する。

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「香港、「反中」書店関係者相次ぎ失踪の謎」の著者

白壁 達久

白壁 達久(しらかべ・たつひさ)

日経ビジネス記者

2002年関西大学経済学部卒業後、日経BP社に入社。日経ビジネス、日経ビジネスアソシエを経て、2015年から香港支局長としてアジア全体をカバーする。2016年8月から日経ビジネス記者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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牛島 信 弁護士