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米国のTPP復帰検討は、トランプ流の揺さぶりか

TPP11の「3月署名で合意」は米国の想定外だった

2018年1月30日(火)

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ダボス会議でトランプ大統領が「TPP復帰を検討」と発言したという。しかし、その本気度はいかほどか。トランプ大統領の発言やこれまでの通商戦略を見ると、それがトランプ流の単なる「揺さぶり」の可能性が高いことが浮かび上がる。

「TPP復帰検討」というトランプ大統領の発言は単なる揺さぶり工作か(写真:AP/アフロ)

 スイスで開催された世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)でのトランプ大統領の演説に衝撃が走っている。これを受けて日本の新聞は一斉に「環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰検討を明言」「TPP再検討」「多国間協定に意欲」と報じている。「軌道修正」「現実路線への転換」などの言葉が躍り、一部の報道では「就任2年目で方針転換する」とまで言い切っている。

 果たしてそうだろうか?

 かつて私も「いずれ、米国がTPP復帰する可能性は十分ある」と指摘した(参照:2017年5月26日付記事「米国抜きTPP11に隠された日本のしたたか戦略」)。果たして、今回の演説がそれに当たるのだろうか。

演説を先入観なく読めば・・・・・・

 こうした発言を読み解く上で、我々は「期待から生まれるバイアス」には注意しなければならない。

 トランプ氏は前日のテレビのインタビューで、再交渉を前提にTPPへの復帰を検討する考えを明らかにして大きな波紋を呼んだ。この衝撃発言を受けて、当然演説には注目が集まっていた。勢い演説内容もそれを前提に見てしまう。トランプ氏の計算された演出だ。

 しかし、そういう先入観なく、演説内容を虚心坦懐に読めば、どうだろうか。まずは、該当する発言部分を見てみよう。

The United States is prepared to negotiate mutually beneficial, bilateral trade agreements with all countries. This will include the countries within TPP, which are very important. We have agreements with several of them already. We would consider negotiating with the rest either individually or perhaps as a group if it is in the interests of all.
「米国は全ての国と、相互に利益のある2国間の交渉をする用意がある。これにはTPPに参加する、とても重要な国々も含まれる。それらのうち、いくつかの国々とは既に協定を結んだが、全ての利益に合致する場合、残りの国とも個別に、または恐らくグループとして交渉を検討する」

 これは「TPP参加国を相手に、TPPとは違う、米国の利益に合致する内容の協定を交渉する用意がある」と読めるのではないだろうか。米国政府高官によると、微修正ではなく、TPPとは大幅に内容を変更したものでなければならないと考えているようだ。しかも個別2国間で、ないしは(恐らく=perhaps)グループとして、だ。

 これが果たして、「TPPへの復帰検討」「多国間協定に意欲」だろうか。これまでの2国間一辺倒の交渉から多国間交渉の可能性も匂わせることで、若干選択肢を広げたというのが正しい読み方だろう。むしろ、本質的な部分は方針転換なし、と見るべきだ。日本の新聞の見出しに違和感を覚える。

 ちなみに、「個別2国間」という中には、日米自由貿易協定(FTA)の交渉も当然含まれることにも同時に注目すべきだ。

コメント9件コメント/レビュー

トランプの発言について報道しか見ていなかったので、原文をよんで著者のいうとおりだと思いました。(2018/01/30 16:18)

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「米国のTPP復帰検討は、トランプ流の揺さぶりか」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

トランプの発言について報道しか見ていなかったので、原文をよんで著者のいうとおりだと思いました。(2018/01/30 16:18)

良い記事でした。なかなかこういった当たり前の事を、きちんと言ってくれる記事は少ないです。これからもお願いします。(2018/01/30 15:13)

少し考え方が違う気もする
トランプ(米国)がイニシアチブをとることが出来ない(難しい)局面でTPPに復帰する
それ自体あり得ないと断言できる
何故ならアメリカの利益追従が目的でTPP設立を訴えていたアメリカ経済連が絶対に納得しないからである
アメリカ主導でアメリカの利益、アメリカ経済界が世界の経済をコントロールする為のTPPが今や日本が中心になって正に環太平洋貿易機構として利益追従ではない形で動こうとしている状況でイニシアチブが取れない中に参加しても意味が全くないからだ
今回揺さぶりをかけたのは中間選挙に向けてという部分は概ね正解だろうが…(2018/01/30 13:15)

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