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トランプ大統領、議会演説でトーンが一変

楽観的な米国の大統領らしさ演出も、政策に進展なし

2017年3月1日(水)

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トランプ大統領の初めての議会演説は、これまでのトーンとは一変して明るいものだった。ただし、政策立案が具体的に進展していないという現実も露呈した。特設サイト「トランプウオッチ」のTRUMP WATCHER、丸紅米国会社ワシントン事務所長の今村卓氏が解説する。

暗く怖い現状描写を封印、夢と希望を語る演説に

 演説のトーンはこれまでとは一変した。米国の明るい未来を強調し、議会に超党派での協力を呼びかける。「米国の惨状(American carnage)」というショッキングな表現まで飛び出すほど暗かった1月20日の大統領就任演説に比べれば、2月28日のトランプ大統領の米議会上下両院合同本会議での初めての演説は、米国の夢と希望を強調して国民に団結を訴えるという米国の大統領らしいものだった。

 つい最近の遊説まで続いていたコアの支持層だけが視界に入っているかのような保護主義を正当化する極端な主張も消え、インフラ投資、大型減税を含めた税制改革、オバマケア(医療保険制度改革法)の撤廃と置換、規制改革を穏やかに論理的に訴える。野党の民主党や共和党主流派に対する攻撃的な口調も封印され、協力を呼びかける姿勢も目立った。トランプ大統領の就任から40日近く、混乱続出の政権運営に不安を抱いていた米国民の多くも、この演説を見て少しは安心したのではないか。CNNが実施した緊急世論調査でも、演説に好印象を持った有権者が78%に達している。これなら40%前半に低迷していたトランプ大統領の支持率も少しは上向くだろう。

重要政策が進展していない状況を露呈

 問題は、トランプ大統領が演説で訴えた政策も夢の次元にとどまっていることである。最たる例がオバマケアの撤廃とより良い制度への移行(Repeal and Replace)を議会に求めた訴えである。

 トランプ氏はオバマケアが崩壊しているから撤廃する、選択肢を増やして価格を下げ、良質な医療を国民に提供する、真に競争力のある全米規模の保険市場を作ると強調した。これに対して議場にいた共和党議員は総立ちで拍手喝采の様相だったが、その心中は複雑だったに違いない。議会共和党内では、保険内容の劣化や無保険者の増加を招かずにオバマケアを撤廃、置換する手段が見つからず、議論が紛糾しているのである。

 共和党議員が地元選挙区で開く対話集会には、自分の保険がどうなるのか不安を訴える有権者が押し寄せていることもあり、オバマケアの撤廃を先行させて代替案は後から考えればいいという楽観的な議員は少なくなっている。議会演説でのトランプ大統領の訴えに対して、政権に妙案があるのなら早く出してくれと思った共和党議員が大半だろう。

 トランプ氏が演説で議会に承認を求めた1兆ドルのインフラ投資法案も、昨年の選挙公約から具体的な政策への組み替えがほとんど進んでいない。一方で議会共和党にはトランプ氏ほどのインフラ投資への熱意はなく、むしろ財政赤字が膨らみかねないと消極的な議員も多い。このため、同党の下院指導部は、既にオバマケアの撤廃・置換と税制改革、予算などの審議を先行させることを決め、インフラ投資法案の審議は来年に持ち越しとの観測が強まっている。

 野党の民主党はインフラ投資に積極的だが、今のトランプ政権には議会で民主党と調整を進められるような策士はいない。むしろ、議会演説でのトランプ氏のインフラ投資の訴えは、議会共和党に対しての優先順位を上げてくれという訴えであり、トランプ氏のコアの支持層への弁明だろう。

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「トランプ大統領、議会演説でトーンが一変」の著者

今村 卓

今村 卓(いまむら・たかし)

丸紅米国会社ワシントン事務所・所長

1989年  一橋大学商学部商学科卒業後、丸紅入社(調査部経済調査課)。 91~93年日本経済研究センター出向、93~94年世界銀行国際経済局(在ワシントン)出向、94~2000年丸紅調査部 、2000~2003年丸紅経済研究所主任研究員、2003~2008年丸紅経済研究所チーフエコノミスト、 2008年4月~ 丸紅米国会社ワシントン事務所長。ラテンアメリカ政経学会所属。ワシントン事務所では、米国とラテンアメリカを中心に世界の政治・経済・金融の分析を担当。 これらのテーマに関して、「丸紅ワシントン報告」など多数のレポートを発表、新聞・雑誌・テレビなどに出演・コメントを提供する機会も多い。(バックナンバーは下記の丸紅経済研究所ホームページに収録。) http://www.marubeni.co.jp/research/index.html

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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