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鉄鋼規制より怖いコーン米NEC委員長辞任

日本とEUは規制対象から除外される可能性が高い

2018年3月13日(火)

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3月8日、トランプ大統領が鉄鋼輸入制限に署名した。だが、衝撃は「現実派」とされていた国会経済会議(NEC)委員長の辞任の方が大きい。日本とEUが「規制対象外」となる可能性も高く、怖いのはむしろ米政権の政策決定プロセスの欠如だ。

コーン国家経済会議(NEC)委員長は3月6日、辞任を表明した(写真=UPI/アフロ)

 3月8日、トランプ米大統領が鉄鋼輸入制限に署名した。だが、この鉄鋼の輸入制限そのもの以上に、日本を含む関係各国で激震が走ったのが、3月6日のコーン国家経済会議(NEC)委員長による辞任表明だ。経済政策の司令塔であったコーン氏は国際協調派、現実派、対中融和派とされていた。日本などの通商政策当事者にとって、コーン氏は既存の貿易秩序を前提にした現実的な議論をできる相手として期待されていた。だが、コーン氏がトランプ政権を去ることで、通商製造政策局長のナバロ氏ら保護主義派、対中強硬派の声が、これまで以上に大きくなるのは確実だ。

 実際、トランプ大統領が発表した鉄鋼製品に対する関税引き上げについては、そもそも、ロス商務長官は先月、2つの選択肢を提示していた。1つが、全ての国を対象に24%以上の関税をかけるというもの。もう1つが、中国、韓国、ブラジルなどの12カ国を対象に53%以上の関税をかけるというものだ(関連記事:トランプの鉄鋼輸入制限で米中貿易戦争が勃発?

 だが、ホワイトハウス内で激論が交わされている最中、トランプ大統領はコーン氏らの反対を押し切って前者の選択肢に沿った措置を、突如鉄鋼業界との懇談の場で予定外に表明してしまった。もちろんホワイトハウス内は大混乱に陥った。

 その後、トランプ政権は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉をしているカナダ、メキシコを除外し、さらに豪州を除外する方針を出した。その他の国の除外については今後2週間以内に決定する。まず高めのボールを投げておいて、徐々に相手から譲歩を勝ち得る。全ての国を対象にすると見せかけておいて、結果的に特定国を対象にしたものに近くなっていく。トランプ大統領らしい取引手法といえる。

 そして、その交渉の任に当たっているのがライトハイザー通商代表である。これは、鉄鋼問題の主導権がロス商務長官から、交渉を専門とするライトハイザー通商代表に移ったことを意味する。ライトハウザー氏の関心があるのは、「米国の鉄鋼産業をどうしたいか」という本質的な問題ではなく、基本的に「交渉そのもの」だ。

 しかも、鉄鋼問題とは全く無関係な貿易赤字の解消を迫り、有利な条件を引き出そうというのは、およそ筋が通らない強引なやり方だ。

 ナバロ氏ら保護主義派の声がより大きくなり、その声を背景に交渉担当のライトハウザー氏が鉄鋼問題の主導権を握るということは、日本を含む貿易相手国にとっては、これまで以上に細心の注意が必要になるということだ。

 問題は、こうしたトランプ流の交渉手法と側近の体制だけではない。もっと深刻なのはトランプ政権の政策決定メカニズムが、致命的なほどに機能不全に陥っていることだ。分かりやすく言えば、トランプ大統領が自分の直感だけで即決してしまう危うさである。米朝首脳会談の突然の方針決定も、まさにその典型だ。

 トランプ大統領は自らを「交渉の達人」と自任している。メディアのインタビューでも「意思決定で重要なのは自分だけだ」と言い放っている。これはホワイトハウスの政策決定メカニズムが機能不全に陥っていることを示している。今のホワイトハウスには秩序はなく、混乱しかない。

 そして、政府内のスタッフについても目を覆うような事態が進行している。以前から政治任用の高官の不在は指摘されているが、問題はそれだけではない。例えば、北朝鮮問題の専門家や米韓FTA(自由貿易協定)の立役者などが辞めたり、左遷されたりしている。今仕事をしているスタッフたちの士気も大きく下がっており、組織としては危機的状況にある。

 まるで、ワンマン社長の下で社員がやる気をなくして辞めていくダメ会社を見ているようだ。

コメント2件コメント/レビュー

トランプが仕掛ける「貿易戦争」の2つの顏

◆貿易収支と中国の覇権
今回の輸入制限措置は、貿易戦争への口火を開きかねないが、それには2つの側面がある。即ち中国をターゲットにした側面と、それ以外の国もターゲットにした側面だ。
筆者は、米国から中国への覇権交代は人類の最大多数の最大幸福のためには阻止すべきであり、中国に対する措置については、このために必要な布石であると考える。

◆2国間と多国間貿易バランス
2国間貿易バランスを追求すれば、自由貿易主義者のコーン前委員長も懸念したように、貿易、進んでは世界経済が縮小均衡してしまいかねず、避けるべき悪手である。
しかし、トランプの懸念にも理解できる点はある。
今後、世界経済はAI化ロボット化が進んで行き、消費者の消滅へと向かう可能性も高く、各国政府は税制等で雇用を人為的に創出し、それによって作り出した購買力を海外製品から守る必要も生じ得る。

2国間の貿易バランスではなく、結果の平等との批判は在ろうが、WTO等のルールだけでなく、敢えてその国が望まぬ限り基本的に貿易赤字国が無くなるような多国間の貿易バランスが図られる何らかの仕組み作りは、今後検討される余地はある。(2018/03/13 11:55)

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「鉄鋼規制より怖いコーン米NEC委員長辞任」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

トランプが仕掛ける「貿易戦争」の2つの顏

◆貿易収支と中国の覇権
今回の輸入制限措置は、貿易戦争への口火を開きかねないが、それには2つの側面がある。即ち中国をターゲットにした側面と、それ以外の国もターゲットにした側面だ。
筆者は、米国から中国への覇権交代は人類の最大多数の最大幸福のためには阻止すべきであり、中国に対する措置については、このために必要な布石であると考える。

◆2国間と多国間貿易バランス
2国間貿易バランスを追求すれば、自由貿易主義者のコーン前委員長も懸念したように、貿易、進んでは世界経済が縮小均衡してしまいかねず、避けるべき悪手である。
しかし、トランプの懸念にも理解できる点はある。
今後、世界経済はAI化ロボット化が進んで行き、消費者の消滅へと向かう可能性も高く、各国政府は税制等で雇用を人為的に創出し、それによって作り出した購買力を海外製品から守る必要も生じ得る。

2国間の貿易バランスではなく、結果の平等との批判は在ろうが、WTO等のルールだけでなく、敢えてその国が望まぬ限り基本的に貿易赤字国が無くなるような多国間の貿易バランスが図られる何らかの仕組み作りは、今後検討される余地はある。(2018/03/13 11:55)

大統領本人はその自覚はないようですが、アメリカも着実に撤退戦を進めているようですね。(2018/03/13 09:29)

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