Winter Festa2017-2018

私は伊藤派でも鈴木派でもない

ヨーカ堂派の三枝新社長、「らしさ」取り戻せるか

 地盤沈下著しい総合スーパー(GMS)業界にあって、ご多分に漏れず苦戦するセブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂。2016年2月期には上場以来初の営業赤字に転落。すでに不採算店舗の閉鎖など構造改革案を打ち出してはいるものの、復活に向けた明確な道筋を描けたとはいえない状況が続く。

 そのイトーヨーカ堂で3月1日、中国事業を統括していた三枝富博・常務執行役員(67)が社長に昇格した。

 セブン&アイで「お家騒動」が表面化し、約25年にわたって同社を率いた鈴木敏文会長(84、肩書は当時)が電撃退任したのは2016年春のこと。カリスマ不在の巨艦をいかに舵取りするか――。経営トップを引き継いだ井阪隆一社長(59)が求心力の源泉として頼ったのが、伊藤雅俊名誉会長(92)ら創業家の存在だった。

 伊藤家はグループを束ねる象徴でありながら、その名前を冠したイトーヨーカ堂はセブン&アイの足を引っ張る存在でもある――。三枝氏はこの皮肉な「ねじれ」を解消し、イトーヨーカ堂を再び輝かすことができるのか。

 3月4日、土曜日。昼どきのイトーヨーカ堂アリオ北砂店(東京都江東区)で、週末のスーパーに似つかわしくないスーツ姿の男性が歩きまわっていた。まずは野菜、次に肉、さらには魚……。早足で売り場から売り場へと移動しながら、時折ハッとした表情をみせては陳列棚に手をかけ、パッケージは正面を向いているか、値札は曲がっていないかと点検する。

週末のスーパーに似つかわしくないスーツ姿の男性が、売り場を歩き回っては慣れた手つきで陳列棚を点検していた(2017年3月4日、東京都江東区のイトーヨーカ堂アリオ北砂店)

 「朝起きてから顔を洗ったり歯を磨いたりするのと一緒。売り場がきちんと整っていないとなんだか気持ち悪くて、どうしたって手が動いてしまいますよね」

 屈託なく笑うこの男性こそが、ヨーカ堂社長に就いた三枝富博氏だ。この週の水曜に就任したばかりの同氏。店長会議や各事業部門へのヒアリングが重なって本社からなかなか抜け出せなかったといい、就任してから初めて迎えた休日、さっそく店舗視察に繰り出していたのだ。

中国駐在20年、異色の経歴

 三枝社長は異色の経歴の持ち主だ。

 明治大学法学部を卒業後、大和証券を経て1976年にヨーカ堂に入社。主に文具関連のバイヤーとして活躍した後、ヨーカ堂が1996年に中国出店を決めると、現地進出プロジェクトへの参加を志願。1997年に中国に正式赴任してからは約20年間、現地駐在社員として一貫して中国本土で職務にあたってきた。

 日本国内のヨーカ堂社員の多くは、三枝社長と直接の面識がない。「はじめまして、店長です」「三枝です、どうぞよろしく」。この日の視察では、社員らが自分たちの新しいボスがやってきたと気づくたび、店内のあちこちで「社内名刺交換会」が開かれていた。

視察途中には、社内名刺交換会が始まる場面も(2017年3月4日、東京都江東区のイトーヨーカ堂アリオ北砂店)

 三枝社長は就任初日の3月1日、店長や本社幹部ら約800人が出席した会議でも「ほとんど私のことを誰も知らないと思いますので」と話し、自己紹介に長い時間を割いている。

 中国事業を専門としてきた三枝氏がヨーカ堂本体の社長に就いたのは何故なのか。日本の総合スーパー産業の現状をどう認識していて、長らく経営不振に苦しむヨーカ堂をいかに復活させようと考えているのか――。日経ビジネスは3月上旬、改めてインタビューする機会を得た。

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著者プロフィール

藤村 広平

藤村 広平

日経ビジネス記者

早稲田大学国際教養学部卒業、日本経済新聞社に入社。整理部勤務、総合商社インド拠点でのインターン研修などを経て、企業報道部で自動車業界を担当。2016年春から日経ビジネス編集部。

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いただいたコメントコメント5件

あぁ良かった。ちゃんとした人が居たんだな、イトーヨーカドーにも。(2017/03/18 17:03)

 さりげなく書いてあるけど、普通小売店舗で名刺交換なんかあるだろうか。他社の人や取引先ならまだしも。もしイトーヨーカ堂でそれが常態なら、他社とは違った仕組み(人や情報の流れ)があるのかもしれない。もう少し突っ込んだ分析が欲しい。おそらく三枝氏の問いかけもそこいらへんにある。

 それと三枝氏が言っていることは、ローソン(だったか)の記事にあった、”ゆるやかな統合”といった連邦制度の考え方と同じ。せっかくインタビューで肉声が聞けているんだから、さらに詳細を分析できなきゃ。

 いまだにカリスマなぞと言う言葉を前ふりに置きっ放し、ということは、やっぱり個人崇拝のままか?(2017/03/18 16:38)

お客様志向的な事が多く語られますが
営業中の店内で、店長やスタッフが揃って自社の社長と名刺交換している。写真まで撮らせている。
これに、何とも感じない事が1番の問題だと気づく事が重要では…
伊勢丹や三越もしかり、幹部が構造改革や仕組みばかりに目が行き、肝心な現場やお客様目線になれない
今回の写真は現場の責任者である店長もしかりなところが客離れもかなり重症かなと感じます。
ECとリアル店舗の最大の違いはそこに商品があり、人がいる事
カテゴリーキラーと総合スーパーの違いは地域の生活に密着できる事
この違いを生かさない限り、利用価値は下がるだけだと思います。
再定義ではなく、脈々と続く存在意義では…(2017/03/18 13:02)

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