• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

働き方改革、残業時間の上限規制だけでは不十分

社労士を活用して違反企業の監督体制を強化せよ

2017年3月23日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 政府が進める「働き方改革」が、今春大きく動いた。安倍晋三首相は3月13日、経団連の榊原定征会長と連合の神津里季生会長を首相官邸に呼び、残業時間の上限規制について、繁忙月は例外として「100時間未満」とすることを要請した。労使とも受け入れたことで、政府は労働基準法など関連法の改正案を今年の国会に提出する。

 従来は、労使が合意していれば残業時間を青天井で増やすことができた。この抜け穴を防ぎ、罰則付きの法律で上限を守らせる労働基準法の改正案が決められたことは画期的だ。しかし、実効性の担保には違反企業の確実な取り締まりと、時間ではなく成果に基づく専門職の働き方ルールの確立が不可欠である。

働き方改革の柱となる残業規制を巡る折衝では、首相官邸が議論を主導した(写真:読売新聞/アフロ)

政府の介入がなぜ必要か

 働き方改革の大きな柱のひとつが長時間労働の是正である。これまでも残業時間の上限規制はあったものの、企業が労働組合と合意した特別条項付きの三六協定さえあれば、残業時間を際限なく増やすことができた。この抜け穴を防ぎ、罰則付きの法律で残業時間の上限を規制したことは画期的である。賃金や労働条件の決定は労使自治に委ねるとの従来の原則を、公共政策の観点から修正したものとして大きな意義がある。

 労働組合のない中小企業の労働者は使用者に対してとくに弱い立場にあるため、労働組合組織率の引き上げ先決という見方もある。しかし、組合組織率や賃金水準の高い大企業ほど、時間外労働時間が長いのが実態である。これは大企業のほぼ全部が労働時間の上限を外す労働組合との特別協定を締結しており、月間80時間超や100時間超等、著しく残業時間の長い労働者の占める比率が、企業規模が大きいほど高いことでも示される(下の表参照)。このように労働組合が長い残業時間の歯止めとして機能していないことが、今回の法改正の背景となった。

大企業ほど長時間残業が多い
出所:厚生労働省就労条件実態調査(2013年度)

 これは職種別同一賃金が一般的な米国等では、企業にとって既存の社員に残業割増賃金を支払うよりも新規雇用を増やす方が人件費の節約となることと比べて、日本では不況時にも過剰雇用を維持しなければならないという制約のためである。このため普段から残業に依存する働き方で、賃金に比例した残業手当を稼ぐとともに、不況時に労働時間を削減して雇用を守ることが労使双方にとっての利益となる。

 過去の高成長期に定着した、企業内で多様な業務を経験し熟練度を高めるキャリアパスを重視する慣行のため、個々の業務範囲が不明確となり、一部の社員に過大な負担が課される場合も少なくない。また、個々の仕事と賃金とが明確に結びつかないことから社員の人事評価の基準も曖昧となり、労働時間の長さが企業への貢献度の高さと見なされ易いことも長時間労働の温床となる。

 慢性的な長時間労働は社員の健康を損なうだけでなく、時間当たりの生産性向上も抑制する。また、専業主婦を暗黙の前提とした世帯主の長時間労働は、子育て期の共働き社員に不利となり、女性の活用と子育てとの矛盾を引き起こす大きな要因となる。しかし、従来の働き方を前提とした労使協調路線にこだわる企業に委ねていれば、抜本的な改革はいつまでも実現できない。これが安倍政権の下で、労働市場への強力な介入が必要となった所以である。

コメント3件コメント/レビュー

 社労士ねぇ?
 でも東芝の事件などでもわかるように、監査役や会計士などがいても、結局なにも見ていなかったということには歯止めにならないね。
 現行の制度では、お金を払ってくれるところに逆らえない、というところは超えられないし。

 結局、法人からのお金で独立した財団なり協会なりをつくって、税理士や会計士、あるいは社労士などを登録したうえで、その組織で編成したチームによる監査をするしかないんじゃないの?
 (そうした上で、毎年チーム内のメンバーを少しずつ交替させ、監査資料にお墨つきを与える。)(2017/03/23 11:03)

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

「働き方改革、残業時間の上限規制だけでは不十分」の著者

八代 尚宏

八代 尚宏(やしろ・なおひろ)

昭和女子大学特命教授

昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授。国際基督教大学卒業後、旧経済企画庁を経て上智大学教授、日本経済研究センター理事長、国際基督教大学教授等を経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

 社労士ねぇ?
 でも東芝の事件などでもわかるように、監査役や会計士などがいても、結局なにも見ていなかったということには歯止めにならないね。
 現行の制度では、お金を払ってくれるところに逆らえない、というところは超えられないし。

 結局、法人からのお金で独立した財団なり協会なりをつくって、税理士や会計士、あるいは社労士などを登録したうえで、その組織で編成したチームによる監査をするしかないんじゃないの?
 (そうした上で、毎年チーム内のメンバーを少しずつ交替させ、監査資料にお墨つきを与える。)(2017/03/23 11:03)

社労士の活用はおよそ非現実的に思われる。なぜならば大半の社労士は「会社側の人」、すなわち会社とタッグを組むことでご飯を食べる人だからだ(例えば税理士に税務署の査察官をさせるようなもの)。
それよりは、労働組合専従経験者や、リタイアした人事担当者などをメインターゲットに、准労働基準監督官のような資格を新設し、嘱託契約で活用するのがよいと思われる。※現状の労働基準監督官には「労働基準」と「安全衛生・労災」の両方の知見が求められるが、当該資格は労働基準に純化したものとすべき(民間の駐禁取締り人が交通事故や殺人事件を見ないのと同様)。(2017/03/23 10:44)

社労士を評価して頂けるのは有難いのですが、開業社労士の収入の多くは企業からの顧問料や年金相談、助成金獲得のスポット報酬等なので、彼らがどこからお金を貰っているのかを考えて欲しいです。お国から適正な成功報酬を頂けるならまだしも、顧問先と顧問報酬の双方を失うリスクを冒してまで監督官ばりの取り締まりは難しいと思いますが…。
残業の削減は業務の棚卸で無駄な仕事を省くことが欠かせないと思います。1人が責任をもって行えばいい作業を複数人でやっていたり(引き継ぐ側も上からやれと言われただけなので、なぜそのプロセスが必要か説明できないのです)、参加する必要のない人まで会議に参加させたり、あげく発言もしないのに部下に使わない資料作りを任せてみたり。個人レベルなら簡単にカットできるムダも、複数人が絡むとしがらみもあって中々カットできないんですね。(2017/03/23 08:21)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

面白い取り組みをしている会社と評判になれば、入社希望者が増える。その結果、技能伝承もできるはずだ。

山崎 悦次 山崎金属工業社長