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セブン会長、引退会見で見せたお家騒動の恥部

鈴木敏文氏、大株主伊藤家の“豹変”で退任へ

2016年4月8日(金)

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 4月7日、セブン&アイ・ホールディングスの2016年2月期決算を説明する記者会見の会場は、異様な雰囲気に包まれていた。

 かねて、同社の鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者、83歳)は、傘下でコンビニエンスストア事業を手掛けるセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼COO(最高執行責任者、58歳)に対し、退任を求めてきた。4月5日に開かれた指名・報酬委員会では、井阪社長の退任と新たな人事案について、鈴木会長とセブン&アイの村田紀敏社長兼COO(最高執行責任者、72歳)、社外取締役2人の計4人が、5時間に渡る議論を重ねた。それでも結論は出ず、7日の取締役会で、井阪社長の退任を含めた人事案が諮られることになった。

 結果は、賛成7票、反対6票、白票が2。取締役15人の過半の賛成を得ることができず、鈴木会長の提案した人事案は否決された。これを受けて、鈴木会長は退任を決意したという。午後4時半から開催された決算会見は、急きょ、鈴木会長の「退任説明会見」に変わった。

 報道陣が多数詰め掛ける中で、鈴木会長や村田社長らが語った内容から明らかになったのは、セブン&アイのお家騒動の“恥部”だった。

古参顧問2人が登場し、鈴木会長の主張を支持

「退任会見」で鈴木敏文・セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOは何度も宙を仰いだ(写真:的野弘路、以下同)

 当初、会見は2016年2月期の業績を説明するため、村田社長とCFO(最高財務責任者)、予算管理担当執行役員の3人で実施する予定だった。しかし、急きょ鈴木会長が出席することになり、さらに、16時半の会見開始直前に、新たに2人が会見に同席することになったと報道陣に告げられた。

 時間ぴったりに会見会場に姿を現した鈴木会長は、マイクの前で次のように話を始めた。

鈴木会長:こんなにたくさんの人に集まってもらって、びっくりしています。なぜ急きょ集まっていただいたかということですが、一部、皆さんもご存知かもしれませんが、今回の新人事の問題で、色々なことが言われております。

 そこで、まずは事実を申し上げなくてはならないと思いました。1つは、セブンイレブンの社長交代の問題です。もう1つは、その過程における経営と資本の分離という問題について、やはり私はこうあってはならんと感じており、むしろそちらに重点を置いてお話します。

 今日ここに、4人が顔をそろえていますが、(報道と)実態があまりに違い過ぎるということで、証人として話してもらうことがあればと前に並んでいただきました。

 鈴木会長、村田社長とともに姿を現したのは、セブン&アイで顧問を務める後藤光男氏(81歳)と、佐藤信武氏(77歳)いう古参幹部2人だ。後藤氏は野村企業情報の社長やイトーヨーカ堂の常勤監査役なども務め、流通業界に明るい。佐藤氏はイトーヨーカ堂の副社長を務めた人物。二人とも古くから鈴木会長と創業者である伊藤雅俊名誉会長(91歳)らをよく知る。

「井阪社長よりも古屋副社長の方が仕事ができた」

鈴木会長:第一の問題として、セブンイレブンの社長、井阪をなぜ今、替えるのかと言われています。私は彼を将来に渡って育てようと本人にも伝えましたし、(セブンイレブンの)副社長の古屋(一樹)くんにもそのように伝えてきました。

 彼(古屋副社長)の方が(井阪社長よりも)年が上で、仕事ができましたけれども、育てるという意味を含めて、古屋くんに支持してもらいたいと言いましたら、古屋くんも分かりましたということで、(井阪氏の社長就任を)引き受けてくれました。

 古屋くんはできるだけのことをやってきました。私も(井阪)社長を立ててやってきたし、何とか育ってもらいたいという意味で、皆さんの前には井阪くんが多く顔を出してきたと思います。私が(メディアの前に井阪社長を)出させるようにしてきたんです。彼は話をするのは得意ですし、それは彼のいいところだと私も評価してまいりました。

 井阪氏をセブンイレブンの社長に登用したのは鈴木会長だ。当時の狙いを説明した後、鈴木会長は井阪氏への不満を執拗に訴え続けていく。

「セブンイレブンの経営方針はずっと私が出してきた」

鈴木会長:ただ、彼(井阪社長)がCOOとしての役割を果たしたかというと、一生懸命やってくれたんでしょうが、会社全体として見ると物足りなさがあったことは事実です。それは本人にも、周りにも言ってきました。セブンイレブンの社長は、これまで最長で7年間の任期でやってまいりました。彼(井阪社長)も7年経ちましたから、ここで一つご苦労さんということで、(退任するよう)内示を出しました。

 内示をしたところ、「分かりました」ということで、(井阪社長は次にセブン&アイ)ホールディングス社長の村田くんのところに行きまして、「会長から(退任と)言われて、分かりました」と意思表示をした。けれどその後、再び私のところに来まして、「一昨日の話は、私は受けられません」と言いました。

 私は「なんで?」とびっくりして聞き返しました。すると彼は「私は7年の間にこれこれこういうことをやりました」と。「それは君一人でやったの」と穏やかに聞きましたら、「私が中心でやりました」と言う。私は「そうじゃないだろう」と。セブンイレブンの経営方針はずっと(私が)出してきて、みんなでそれを実行してきました。私が非公式な会議を朝の8時頃から設けて、社長や副社長、商品部長、企画室長を集めて、方針を出してきた。彼はそれに従ってきただけです。

コメント64件コメント/レビュー

企業危機管理は大企業において非常に重要に扱われており、多くの場合はPR会社の提案を受けた謝罪記者会見等につながっている。
このセブン経営陣の会見はそういうプロセスがあったとはとても思えない「本音の会見」であり、この保守的で広告出稿の多い企業が見せた極めて少ない偶発的なネタと言えます。こういう場合記者や編集サイドの意見を極小的に扱い、会見内容を逐語的に掲載することは、その企業の本音を伝える手段として有効だと思います。
しかし、顧問の方々のご意見はかなり強烈な老いぶりでクラッときます。鈴木会長も含めて完全に裸の王様状態だったということがよく分かる記事で、2016年のベストだと思います。(2016/12/29 09:59)

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「セブン会長、引退会見で見せたお家騒動の恥部」の著者

日野 なおみ

日野 なおみ(ひの・なおみ)

日経ビジネスクロスメディア編集長

月刊誌「日経トレンディ」を経て、2011年から「日経ビジネス」記者。航空・運輸業界や小売業界などを担当。2017年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

大竹 剛

大竹 剛(おおたけ・つよし)

日経ビジネス記者

2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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企業危機管理は大企業において非常に重要に扱われており、多くの場合はPR会社の提案を受けた謝罪記者会見等につながっている。
このセブン経営陣の会見はそういうプロセスがあったとはとても思えない「本音の会見」であり、この保守的で広告出稿の多い企業が見せた極めて少ない偶発的なネタと言えます。こういう場合記者や編集サイドの意見を極小的に扱い、会見内容を逐語的に掲載することは、その企業の本音を伝える手段として有効だと思います。
しかし、顧問の方々のご意見はかなり強烈な老いぶりでクラッときます。鈴木会長も含めて完全に裸の王様状態だったということがよく分かる記事で、2016年のベストだと思います。(2016/12/29 09:59)

鈴木敏文氏の言い分に基本的な面で一点異論があります。資本と経営の分離というのは、過半数の資本(株)が株主総会の場で経営専門者に経営を据え任せること。それ以外は経営専門者に干渉しないこと、だと理解しています。そして、創業家の伊藤家は約10%の株保有ではあるが、意向を示せば同調者がすぐ50%を超える立場でしょう。永らく信任を得て来たことも、この度拒絶されたことも、資本と経営の分離は貫徹しているように思えますが、鈴木氏は疑義を感じているようです。何故か分かりませんが、株主の多数派工作ができなかったことが致命傷と考えます。
仲間を引き連れて会見して、誰がどう言ったなど並べても仕方がない話だと思います。鈴木氏はGEのジャック・ウェルチ氏と全く違うようですね。(2016/08/30 02:16)

セブンイレブンの一消費者としての感想です。ここまで便利な機能を持ったお店を作り上げたのは鈴木さんだったのですよね?会社の内実などは一消費者に関係の無い事ですが、今でもセブンイレブンのお弁当を味見していた方と言う事には、買う時の安心感にも繋がり、感心していました。今後、株主の利益を優先する会社になったり、現場のお店の状態を把握しない経営者になったら、他のお店で買うことになるでしょう。(2016/05/03 06:29)

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三品 和広 神戸大学教授