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期待の新素材「CNF」の世界最大ラインが稼働

日本製紙、新素材普及の尖兵に

2017年4月26日(水)

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 日本製紙は4月25日、石巻工場(宮城県石巻市)で新素材「CNF(セルロースナノファイバー)」の新設ラインを稼働させ、報道陣に公開した。CNFは樹脂への添加により鉄の5倍の強度でありながら、重量は5分の1の強化プラスチックを実現できるとされ、炭素繊維に続く日本発の新素材として期待がかかっている。石巻のラインは年産500トンと世界最大規模。業界でも先んじて量産に取り組み、出遅れていた収益構造の改革を急ぐ。

竣工式で挨拶する馬城社長

 「2017年は我々にとって意義深いエポックメイキングな年になると確信している」。新設ラインの竣工式典で、日本製紙の馬城文雄社長はCNFへの期待の大きさをこう語った。同社は今年、石巻工場を皮切りに、島根県や静岡県でもCNFの新ラインを稼働する。

 CNFは紙の原料であるパルプの繊維をナノ(10億分の1)メートル単位まで細かく解きほぐしたもので、製紙メーカーを中心に製法や用途の開発が急ピッチで進められている。繊維をいかに細かくするかで性質も変化するが、おおむね以下に列挙するような多様な特性を持つ。

  • 軽量高強度
  • リサイクルが容易
  • 耐燃性
  • 酸素を遮断する
  • 圧力をかけると一時的に流動性が高まる
石巻工場で作られるTEMPO酸化CNF

 用途も食品・化粧品・塗料向けの増粘剤、高強度のゴムやプラスチック、ディスプレー、食品包装材など多岐に渡る。

 石巻工場で作られるのはTEMPO酸化CNFと呼ばれるもの。CNFの世界的権威である東京大学の磯貝明教授が開発した化学触媒を使った製法で繊維の表面をマイナスイオン化。負電荷同士の斥力により解きほぐしやすくする。

2019年のフル稼働目標

 3~4ナノメートルという非常に細かい幅の繊維になるため、透明度が高い。食品包装材やディスプレーに適している。また金属のプラスイオンを表面に付加できるので、様々な機能を持たせることもできる。日本製紙では当面、銀や銅のイオンを付加して消臭機能を高めたCNFシートを製造。自社グループで商品化している介護用おむつに利用する。ほかにも白金イオンを使って排気ガスを浄化するCNF不織布も開発中だ。

 日本製紙はおむつむけの生産と有償のサンプル出荷を合わせて今年度中に稼働率2割を目指す。2019年度にはフル稼働を達成する計画だ。

 島根のラインでは別の触媒を使った食品・化粧品の増粘剤用CNFを、静岡のラインでは自動車部品向けCNFをつくる。CNFの幅広い用途をほぼ全てカバーする生産体制を構築する。馬城社長は「CNFを紙・板紙事業と並ぶ収益の柱に育てる」と意気込む。

 日本製紙は新聞紙など洋紙事業の依存度が高く、中長期的な需要の減少が不安要因になっている。主力の石巻工場も、紙の生産能力を東日本大震災による被災前の100万トンから、現在は85万トンまで縮小している。需要減退により修繕のための投資を見送ってきたラインもある。

 王子ホールディングスや大王製紙に比べ、段ボールや紙おむつなど成長分野への投資も出遅れた。挽回を期して、知財や資産を発掘して社内ベンチャーを立ち上げる「新製品開発推進委員会」を設立。製紙技術を転用した新素材や燃料などの開発に取り組んでいる。今春には、小型センサーでグループ内の工場の故障を予知するシステムを外販するサービスが、初めて事業化にこぎつけた。

 こうした新規事業の中でもCNFへの期待感は一際大きい。化石燃料を使わずに国産原料だけで生産することができるCNFは国からの強力なバックアップがあるためだ。経済産業省は2030年のCNFの市場を1兆円と推定している。

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「期待の新素材「CNF」の世界最大ラインが稼働」の著者

寺岡 篤志

寺岡 篤志(てらおか・あつし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞で社会部、東日本大震災の専任担当などを経て2016年4月から日経ビジネス記者。自動車、化学などが担当分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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