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“対米配慮”“対中配慮”は日本の自己満足だ

米国と中国をWTOに提訴しない日本の勘違い

2018年6月8日(金)

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貿易戦争を繰り広げる米中への日本の対応が煮え切らない。欧州連合(EU)は鉄鋼製品に高関税を課した米国と知財問題を抱える中国を、世界貿易機関(WTO)に提訴した。ところが日本は及び腰だ。両国への「配慮」の裏には何があるのか。
トランプ政権領は欧州連合(EU)やカナダ、メキシコに対して、発動を猶予していた鉄鋼、アルミニウムで関税引き上げを決めた。(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ政権が高関税を振りかざして相手国に要求を飲ませる“貿易戦争”が現実のものとなっている。欧州連合(EU)やカナダ、メキシコに対して、発動を猶予していた鉄鋼、アルミニウムで関税引き上げを決めた。通商交渉で圧力をかけるために、一時的に猶予してきたが、譲歩を引き出せなかったことから猶予を打ち切った。

 さらにトランプ大統領は鉄鋼で味をしめて、自動車についても、鉄鋼同様に通商拡大法232条に基づき、安全保障を理由にした追加関税を課す輸入制限の検討に入ることを発表した。これも北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉や日本との2国間協議で譲歩を引き出す思惑からである。

 安全保障理由というのは単なる口実で、取引のための交渉カード作りが目的だ。

 こうしたトランプ政権にどう対応すべきか。日本の対応がどうも煮え切らない。

対米WTO提訴を躊躇する日本

 鉄鋼についてはEU、カナダ、メキシコは一斉に報復関税を課すとともに、世界貿易機関(WTO)違反だとしてWTOへ提訴する方針を明確に打ち出した。WTO協定は安全保障を理由とした輸入制限を例外として認めるが、鉄鋼製品にまで安全保障を口実にするのは明らかに無理筋だ。当然WTO違反としてWTOへ提訴すべきである。米国の口実を許せば、WTOの貿易秩序自体を揺るがすことになる。

 ところが日本はどうだろうか。EUなどのように適用猶予もされずに4月から適用されているにもかかわらず、未だWTOへの提訴をしていない。

 4月の日米首脳会談で安倍総理は「(制度の趣旨から)本来、同盟国の日本は除外されるべき」と発言したものの、アリバイ作りのために一応言及しただけだ。米国の国内生産では代替できない品目は別途除外されるだろうとの計算で、日本の鉄鋼産業にとっての実害はそれほど大きくないと見ているためか、あまり深追いして日米自由貿易協定(FTA)協議などと取引を求められることを避けた面もある。

 しかし日本は除外を求めるだけでなく、そもそも本件をWTO違反として、WTOに持ち込むべきではないか。

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「“対米配慮”“対中配慮”は日本の自己満足だ」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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