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EU離脱後も揺らがない、金融立国の牙城

在英28年の作家が見た、英国が世界を揺るがした日

2016年7月6日(水)

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 EU離脱の是非を問う英国の国民投票の結果は衝撃的だった。事前の世論調査は離脱波と残留派の支持が拮抗していてが、態度を決めていない人々は現状維持に流れる傾向があると言われ、ブックメーカー(賭け屋)のオッズも残留派が圧倒的に優勢だった。負けた場合でも何とか離脱の可能性を残したい離脱派に対し、キャメロン首相は「投票は一回きり。再投票はない」と繰り返していたので、自信があったのだろう。

 投票の翌日、米系投資銀行の社員に様子を聞いたが「クビ切りや英国撤退という話は出ていない。ただてっきり残留だと思っていたので、社内は呆然としている」という返事だった。

分かりやすかった離脱派の主張

『2016年度 EUについての国民投票の手引き(THE2016 EU REFERENDUM VOTING GUIDE)』。投票権に関係なく、全世帯に届けられた。

 人々の意思決定に大きな影響を与えた可能性があるのが、選挙管理委員会が全家庭に配ったA5判サイズで8ページの国民投票の手引きだ。投票資格や投票方法の説明のほか、見開き2ページに残留派と離脱派の主張が簡潔にまとめられている(投票権がない我が家にも届いた)。

 残留派の主張は「EUに残留すれば、経済はより強く、治安はより安定し、暮らしもよくなる」とかなり抽象的で、例として挙げている数字も細かく、総花的な印象である。これに対して離脱派の主張は、まず過去12か月間で25万人以上も流入したEU域内からの移民の問題を訴え、次に英国がEUの予算に1週間あたり3億5千万ポンド(約552億円)も払っており、これだけの金があれば国営の医療制度であるNHS(National Health Service)の病院を毎週作るか、60万人の看護師を雇用できるとしていた。

移民にとって魅力的な“人気国家”の悩み

 離脱派の主張は非常に分かりやすく、インパクトがあった。EU加盟国の国民は自由に移動できるので、所得の低い東欧各国の人々はよりよい暮らしを求めて他国に移動する。この域内移動の2大目的地が、経済大国であるドイツと外国人にとって暮らしやすい英国である。

『国民投票の手引き』の中のページ。左側が「残留派(VOTE REMAIN)」の主張、右側が「離脱派(VOTE LEAVE)の主張。

 英国は日本に比べても社会保障政策が手厚く、こうした移民にも失業手当、カウンシル・フラットと呼ばれる格安の住居、NHSによる無料の医療、国民年金などが与えられ、社会保障費を圧迫している。また人々は移民の流入で治安が悪くなったと感じている。我が家の近所でもここ6、7年、空き巣が非常に多く、住人同士で「東欧系の顔の男があなたの家をじっと観察していたから気を付けろ」とか「こないだの空き巣の犯人はルーマニア人らしい」といった会話がよく交わされている。また東欧からの移民は非熟練労働者が多く、失業率が14パーセント前後と高い非白人(インド、パキスタン、アフリカ系など)の人々の就労機会を圧迫しているので、離脱を支持した非白人の有権者が多かった。

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「EU離脱後も揺らがない、金融立国の牙城」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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