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出光興産、統合反対の創業家が打ち出した「奇策」

予定調和の業界再編、一転白紙の恐れも

2016年8月4日(木)

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 出光興産と昭和シェル石油が進める統合計画に暗雲が立ち込めている。3日、出光の筆頭株主でもある創業家の代理人弁護士が都内で会見を開き、創業者の長男で5代目社長も務めた出光昭介氏が昭シェル株を市場で40万株取得したと明らかにした。

 出光は昭シェルとの統合を前提に、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)が保有する昭シェル株を買い取る計画を進めていたが、創業家のこの動きにより計画を進めるのは困難になる可能性が高まった。

出光興産と昭和シェル石油との経営統合に暗雲が立ち込めている(写真:アフロ)

 今年6月に開かれた出光の定時株主総会で、創業家は昭シェルとの統合について反対意見を表明していた。7月11日には総会後初めて会社側と創業家側で話し合いの場が持たれたが、両者が歩み寄ることはなく議論は平行線を辿っている。9月にも予定していた出光の昭シェル株買い取りまで硬直状態が続くと見られたが、創業家が攻勢に出た形だ。

 40万株は昭シェルの発行済株式数の0.1%程度。全体からすれば少数だが、それを創業家が保有したことにより、会社の計画が頓挫する可能性が出てくる。それはなぜか。

 出光はRDSから相対取引で昭シェル株を直接買い取る計画を発表していた。その株式数は1億2526万1200株で、発行済み株式数の33.2%に当たる。金融商品取引法では、発行済み株式数の3分の1(33.3%)を超える割合で株式を取得する場合は、不特定多数の株主から株を買い取るTOB(株式公開買い付け)を実施する必要があると規定している。つまり出光はTOBなしに株を買い取れるギリギリのラインでRDSと合意していたわけだ。

封じられた条件交渉

 創業家が40万株の昭シェル株を保有したことで、その前提が崩れる。創業家は出光の株式の20%以上を保有する株主グループと見られ、出光の「特別関係者」に当たるためだ。

 代理人弁護士によれば、保有株式数が全体の3分の1を超えるかどうかを判断する際は、会社が取得する株式だけでなく、特別関係者の保有分も加味する必要があるという。これに従うと、創業家を含めた「出光サイド」が保有することになる昭シェルの株式数は3分の1を超える計算になり、RDSとの直接取引はできなくなる。

 創業家は昭シェルとの統合を阻むため、敢えて同社株を保有し出光サイドの保有比率を3分の1以上にするという「奇策」に出た。出光は「想定していなかった」(広報CSR室)とコメントしており、今回の創業家の動きが寝耳に水だったことを認めている。

 もともと出光はRDSから昭シェル株を買い取った後でなければ、統合について具体的な協議はできない状況だった。関大輔・出光興産副社長は7月11日の会見で「昭和シェル株の取得まで具体的な絵が示せないが、それができれば(創業家の)不安を払拭できると思う」と話していた。創業家は出光が株を保有し既成事実を積み上げた上で条件交渉に持ち込まれることを恐れ、奇策に出たわけだ。

 TOBにより出光が昭シェルを傘下に収める道は残されているが、昭シェルはTOBによる買収には反対していると見られる。また「出光興産、創業家の乱が招いた三方塞がり」でも触れたように、TOBに踏み切るには多額の資金を必要とし、買収後ものれんの償却負担が重くのしかかる。海外展開などへの投資がかさみ、財務基盤が磐石とは言えない出光がTOBに踏み切るハードルは高い。「袋小路に陥ったとは認識していない」と会社側は話すが、追い詰められつつあるのは事実だ。

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「出光興産、統合反対の創業家が打ち出した「奇策」」の著者

飯山 辰之介

飯山 辰之介(いいやま・しんのすけ)

日経ビジネス記者

2008年に日経BP社に入社。日経ビジネス編集部で製造業や流通業などを担当。2013年、日本経済新聞社に出向。証券部でネット、ノンバンク関連企業を担当。2015年4月に日経ビジネスに復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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