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23区の大学定員抑制では地方創生はできない

トランプ大統領ばりの保護主義は日本の大学の質を落とす

2017年8月22日(火)

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文部科学省は8月、東京の私立大学の定員増抑制の告示案を公表した。地方大学の経営悪化や撤退を防ぐためとされるが、このトランプ大統領のような「保護主義」は日本の大学の質を低下させ、真の地方創生戦略に反するものである。

文部科学省が大学の一極集中を是正する方針を打ち出したが……(写真=HIKARU MIKI/SEBUN PHOTO /amanaimages)

 文部科学省が東京23区内にある私立大学の定員増を、2018年度から原則として認めない大学設置に関する告示の改正案を8月上旬に公表した。これは政府のまち・ひと・しごと創生会議の「東京都の大学収容力が突出して高く、このまま定員増が進むと地方大学の経営悪化や撤退を招きかねない」との報告書が6月に閣議で了承されたことを受けたものだ。だが、こうした「地方大学の保護主義」には大きな問題がある。

 地方の活性化は重要な政策課題だが、その主要な柱が「東京一極集中の是正」のような地域間の所得再分配政策なら、日本経済全体の縮小均衡をもたらすだけである。東京は国内では一人勝ちのように見えるが、欧米やアジアの主要都市との競争では立ち遅れている面は多い。グローバル経済化や高齢化社会に対応するために、小池百合子知事の公約にある「東京大改革」が必要な所以である。

 今後の人口減少社会では、将来の日本を支える若者に対する教育の質向上が大きな課題である。そのためには、トップクラスの大学の研究レベルをさらに高めるとともに、全国のミドルクラスの大学間で教育サービスの質向上を目指す。そのためには健全な競争の促進が必要であり、各大学が教育面でのベスト・プラクティスを開発し、その成果を共有することが本筋である。

 これに逆行するのが、本年6月の全国知事会の「東京23区への若者の流入が増える流れを直ちに止めるよう文科省に指導強化を求める」という声明である。ここでは東京圏への若年層の流入数と流出数との不均衡の是正という、まるでトランプ大統領の貿易不均衡批判と同じ論理で保護主義を正当化している。

 こうした民間の教育活動にかかわる政府の介入を、国会の審議を経た法律ではなく、文科省告示という「行政主導」で実施すること自体に対する法的根拠も問われなければならない。本来、地方分権化を主張しているはずの全国知事会が、こうした不透明な形での国の介入を積極的に求めるのは、論理矛盾ではないだろうか。

 そもそも若者の大学進学の「選択の自由」を抑制する「保護主義」によって、地方の大学は活性化するのだろうか。すでに18歳以上人口が長期的な減少基調にある時代に、私大の4割に及ぶ、持続的な定員割れ大学をすべて守ることは非現実的である。企業と同様に大学についても「集中と選択」の原則が必要である。例えば、地域ごとの中核都市に多様性のある大学を育成し、周辺地域から若年層も含めた人口を呼び込むコンパクト・シティ政策を実現できれば、福岡のような魅力的な大都市がもっと生まれるだろう。

 大胆な統廃合とリストラで、地方にも活力ある大学を増やし、他の地域と競争することが地方創生の本筋だ。現に関西圏の私大は元気であり、それ以外でも新潟の国際大学、大分の立命館アジア太平洋大学、秋田の国際教養大学など国際的水準の大学が、日本人だけでなく質の高い留学生も集めている。また、金沢工業大学など、就職率の高さを誇っている地方私大も少なくない。

コメント5件コメント/レビュー

国民が教育を受ける権利があることは重々承知してますが、自分の子供が東京の私学を卒業して初めて知らされたことがあります。ゼミに出なくとも、卒論を書かなくとも卒業できると言うこと。
ブランド大学といわれるK大学とか、W大学卒業生は社会に出るとエリート然とした振舞いが多いのですが、多分その資格の無い人も沢山居るようです。国立大学出身者の僻みかな(笑)。
現在では我々が納税した税金も私学にご使用いただいていますが、普通に機能できる大学、学生規模に縮小したほうが・・・。粗製乱造より普通にしていただきたい。地方の良い大学にはもっと助成金を出し、例えばアジア新興国からの留学生受入れの枠を広げるとか、今すぐやれることが幾らでもあると。(2017/08/22 12:42)

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「23区の大学定員抑制では地方創生はできない」の著者

八代 尚宏

八代 尚宏(やしろ・なおひろ)

昭和女子大学特命教授

昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授。国際基督教大学卒業後、旧経済企画庁を経て上智大学教授、日本経済研究センター理事長、国際基督教大学教授等を経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

国民が教育を受ける権利があることは重々承知してますが、自分の子供が東京の私学を卒業して初めて知らされたことがあります。ゼミに出なくとも、卒論を書かなくとも卒業できると言うこと。
ブランド大学といわれるK大学とか、W大学卒業生は社会に出るとエリート然とした振舞いが多いのですが、多分その資格の無い人も沢山居るようです。国立大学出身者の僻みかな(笑)。
現在では我々が納税した税金も私学にご使用いただいていますが、普通に機能できる大学、学生規模に縮小したほうが・・・。粗製乱造より普通にしていただきたい。地方の良い大学にはもっと助成金を出し、例えばアジア新興国からの留学生受入れの枠を広げるとか、今すぐやれることが幾らでもあると。(2017/08/22 12:42)

利害関係者のご意見ですから、評価は難しい。例えば、昭和大学は全寮制の特別学部を山の中に作りましたよ、どうだ!、とおっしゃるのならわかる。また、ご指摘の社会人対象のリカレント教育なら、通信教育の充実(内外の最高水準の大学が実施中のものと競合するが)と、スクーリングは長期休暇を利用してのリゾート地にある(大学)施設での実施というご提案なら、わかります。首都圏にせよ、関西圏にせよ、学習環境としては最適とは言えない土地だからこそ、「高等教育機関」が集中してよいのか、という考え方もある。もちろん、地方に作ればいいというわけではないことも言うまでもない。当然ながら、文科省の姿勢をいかにも安易と批判することは正しいことではあるが。(2017/08/22 11:20)

地方から学生がいなくなる事が地方創成(活性化)の重石になっていることはある程度言えるとしても、今回の定員抑制策はその対策としては何の効果もうまない。
大学自体が切磋琢磨して教育の質を高め、より良い学生を集められるようにすることが重要なのであって、その場がどこであるかは関係ない。
地方であっても良質な学校には学生が集まるし、魅力の無い大学には学生は見向きもしない。
少子化と叫ぶなら、すくない子供により良い環境(学問だけではない)を提供することが必要だろう。即効性がないのが当たり前、10年、20年のスパンで効果をめざすべし。
手始めには幼児保育の充実や、義務教育の完全無償化だろう。大学を保護してもなんにもならないとおもうのだが・・(2017/08/22 09:51)

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