北朝鮮の核実験と日本を飛び越えた弾道ミサイル

我々は不安と怒りに包まれるべきなのか

  • 上村 康太
  • 2017年09月04日
国際社会の制止を振り切るように核実験を強行した北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長(写真:AP/アフロ)

 北朝鮮は9月3日、1年ぶりに6回目の核実験を実施した。同日午後3時半に朝鮮中央テレビは、ICBM(大陸間弾道ミサイル)搭載用の水爆実験が「完全に成功した」と発表した。

 場所は核実験場のある咸鏡北道吉州郡の豊渓里(プンゲリ)周辺と見られる。現時点では、今回の核実験が成功したかどうかは定かではない。ただ、日本の気象庁は午後0時31分頃、北朝鮮付近を震源とするマグニチュード(M)6.1の地震波を観測している。前回(16年9月)の実験ではエネルギー量がM5.3だったことを考えると、爆発の規模は10倍程度大きくなっている。

 8月29日、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは日本列島を越え、北海道の襟裳岬沖約1180kmの地点に着弾した。日米問わず、国際社会から強い非難を浴びる中、それらを無視するかのように、1週間後には核実験を強行した。

 北朝鮮を巡る情勢は更に緊迫度が高まってきた。私たちは、今、これらの行動をどのように捉えるべきなのか。

戦争リスクは高まったのか

 弾道ミサイルの発射については、軍事的には典型的な陽動作戦であったと見て取れる。北朝鮮は8月10日、「火星12号」4発をグアム近海に向けて発射すると通告していたが、我々を挑発するかのように突如、発射の向きを北海道方面へと変えたことになる。

 自衛隊や米軍が保有する地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)や、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を搭載するイージス艦の数には限界があることを見越し、事前の通告で別の地域に打つと嘘をついて相手の戦力を分散させた。

 守る側は、陽動作戦の可能性があると予測できていても、アセットに限りがあるため事前通告の地域の安全を担保せざるを得ない。結果として、北朝鮮からすれば、本当に狙いたいコースで撃墜される可能性を低下させることに成功した。

 戦力を運用する際の原則に「主導と先制」という考え方がある。戦いで勝利の機会を得るためには、相手よりも先に、自ら進んで状況を意図する方向に導くことが肝要だという法則だ。この点、北朝鮮は純粋に軍事的合理性のある行動を選択したといえる。今回のような弾道ミサイル戦は、攻撃側(北朝鮮)が圧倒的に有利となることが明確となる事例となった。

 もう一つ巧妙だった点は、津軽海峡上空を飛翔させたことだ。ここは「国際海峡」であり、日本の領海には当たらない部分がある。日本が、わが国の領土・領海上を飛行したと主張すれば、北朝鮮は、その証拠を示せというだろう。

 たとえ日本が弾道軌道を「正確に把握」していたとしても、その証拠を示してしまえば、今度は北朝鮮に対して日米の探知・識別能力を露呈することになる。こうなると、次にどう撃てば、より撃墜されなくなるかを検討するヒントを「敵」に与えてしまい、結果的に日米は軍事的なデメリットを蒙ることになる。

 更に重要なポイントは、弾道軌道の延長線上に何があるか、ということだ。

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