損害保険大手が激しい海外保険買収に動いている。9月初めには、三井住友海上火災保険が英国の損害保険大手の買収を決め、海外買収で先行する東京海上ホールディングスの追撃に動いた。損保ホールディングスも海外買収には積極的で、三つ巴の戦いはヒートアップする。だが、規模は拡大しても、もくろみ通りに成果を上げられるかというと不安視する声も少なくない。


三井住友海上火災保険が英国の損害保険大手、アムリンを約6420億円で買収することを決めた。
損保大手では、東京海上ホールディングスが2008年に英保険大手キルンと米保険大手フィラデルフィアを、さらに今年6月には米保険会社、HCCインシュアランス・ホールディングスを買収。損保ホールディングス傘下の損害保険ジャパンも2013年末、英中堅損保キャノピアスを傘下に収めるなど、海外保険会社の大型買収が相次いでいる。
今回の三井住友海上のM&A(合併・買収)で一段と拍車がかかるが、海外事業の本格的な競争はむしろこれから。積極的な買収で3社とも海外事業は拡大したものの、グループに入れた海外企業をコントロールし、シナジー(相互作用)効果を上げられるかどうかで、差が付きかねないからだ。
海外の利益比率が一気に45%に拡大
三井住友海上が買収を決めたアムリンは、2014年の収入保険料が25億6400万ポンド(約4692億円)、純利益が2億3700万ポンド(約433億円)。他の保険会社の保険支払いリスクを引き受ける再保険を柱に、船舶や航空輸送などの損害保険の元請けや自動車保険販売など、幅広く保険事業を展開している。英国の保険引き受け市場であるロイズでは2位の大手だ。
買収で三井住友海上を含むMS&ADグループの2014年度の連結純利益はアムリンの純利益が上乗せされるため、1795億円になる。これまでは、海外事業が利益に貢献する比率は25%程だったが、この買収で45%に拡大。3000億円の純利益のうち、2000億円(66.7%)を海外で稼ぎ出す東京海上ホールディングスに一歩近づくことになる。
ただ、今回のM&Aは三井住友海上にとっては収益の押し上げ効果以上の意味を持つ。「保険の引き受けリスクを分散したかった」(田中秀幸・国際業務部長)というのがその1つだ。
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