日本企業の間で国際会計基準(IFRS)への警戒感が広がりつつある。焦点のひとつが、企業が建物や設備などで活用している「リース取引」だ。IFRSをつくる国際会計基準審議会(IASB)は2015年末にも、リース会計の改正最終案を公表する見通しで、実現すれば流通業や航空会社などの財務諸表に大きく影響する可能性がある。
「どこまでを負債と捉えるのが適切か」。高島屋の財務担当者は今後、機関投資家との間でこうしたやり取りが増えそうだと打ち明ける。高島屋は訪日外国人の増加で免税品売上高が約2倍に膨らむなど業績が好調で、財務の健全性を示す自己資本比率は41%(いずれも2015年2月期)と過去10年間で15ポイント以上も改善した。2016年2月期も増収増益を見込む。
しかしリース会計に目を転じると、状況は楽ではない。店舗の賃料を抑えるため主力の新宿店などで昨年、1000億円規模を投じて、店舗用の建物を買い取った。それでも店舗の土地は引き続き一部賃貸しているため、高島屋は土地の使用権利を移転する「オペレーティングリース」と呼ばれる契約を土地所有者との間で結んでいる。
日本の会計基準では、毎期のリース料を損益計算書に費用として計上すれば済む。しかしIASBが今年末に公開予定の改正リース会計草案では、貸借対照表に資産としてリース物件の使用権利、負債としてリース料の支払い義務を計上させることが固まった。既に10月中旬までに審議をほぼ終えた。国際会計基準を適用する企業は2019年から、このルールに従わなければならない。
高島屋の場合、オペレーティングリース(将来の支払い義務を示す未経過リース料、2015年2月期)は906億円と1年間で4倍強に拡大した。仮にIFRSを適用して、これが全部負債に乗れば自己資本比率は計算上、38%程度まで押し下げられる。しかも高島屋が1年以内に支払うリース料は15億円程度で、仮にこの水準が続けば59年先までリース債務を背負い込んでいることになる。高島屋は「会計基準の違いで企業の実態が霞まないように、株主には一層丁寧に説明していきたい」(広報・IR室)という。
イオンなどの小売りでは大型ショッピングモールなどが対象になるケースが多い。テナントとして入ることが多い良品計画は4年先、ヤマダ電機は8.5年先と、百貨店などに比べるとややリース債務の年限は短い。百貨店が駅前などに長期間で構えているのに対し、小売りは新規出店を繰り返しているためだ。
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