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中国「国家資本主義」の抑止策が日本主導で始動

米国巻き込み、インフラとデータの公正取引を目指せ

2017年11月30日(木)

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露骨な「国家資本主義」を強める中国。中国の「一帯一路」構想は日本にとってもビジネスチャンスだが、リスクも大きい。産業界の懸念を軽減すべく、日本主導で「中国抑止策」とも言うべき取り組みが密かに動き出している。
経団連会長らが訪中し、11月21日に李克強首相と会談した(写真:ロイター/アフロ)

 先週、日本の経済界の訪中団が李克強首相や国家発展改革委員会首脳などと会談した。久々に日中関係が改善の兆しを見せている中で、日本の経済界も今後のビジネスチャンスに内心期待を抱きつつの訪中であった。最大の関心は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」がビジネスチャンスになるかだ。しかしそこには大きな課題も横たわっている。

一帯一路には選択的協力

 そもそも、中国から欧州までの陸路・海路をカバーする経済開発構想である「一帯一路」は、日本企業にとってビジネスチャンスではあるものの、実際はどう対応していいか決めかねているのが正直なところだ。

 一帯一路に込められた、中国の覇権主義的な意図は明確である。従って、スリランカなどに見られる、軍事的意図での港湾整備などは警戒すべきだ。またタイなどでの鉄道整備のように、日本企業が中国企業と激しく受注を競っている分野では協力できないのは明らかである。受入国側も、日中を競わせるしたたかさを持っている。

 しかし、これらの分野以外で、例えば、環境・省エネなどの分野では、第三国で日中が協力してビジネスを展開していくことは有益だろう。一帯一路に対しては、分野ごとに是々非々で「選択的に協力」するアプローチが必要だ。

 問題は、その際の中国の手法が懸念されることだ。今回の訪中団も中国側に対して、協力できる条件として、グローバルスタンダードに従った透明性、開放性、経済性、採算性を充足することを求めた。

APECに国際ルールの布石を打つ

 こうした中国の動きを牽制するためには、単に日本単独で注文をつけているだけでは埒が明かない。中国を牽制するための何らかの「国際的なルール」が必要だ。しかもそのルール策定に中国自身も参加して、関与していることがポイントになる。

 実はそのための仕掛けができたのが、直前に開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議であった。

 そこではインフラ整備への協力について、「質」を確保するための仕組み作りが合意されたのだ。これは日本が提案を仕掛け、米国、ベトナムを共同提案者にした。明示的には言わないが、明らかに中国の「一帯一路」を牽制したものである。

 例えば、途上国の返済能力を超える貸し込みを禁止することが提案された。中国がスリランカの港湾整備で、多額の借り入れの返済として99年の使用権を得て、軍事使用されることが懸念されているが、類似の動きは各地で見られる。この提案は、こうした動きを封じるためだ。

 この他にも、入札における開放性、透明性の確保が重要なポイントの1つだ。日本をはじめ先進国は、経済協力開発機構(OECD)のガイドラインによって、公的資金による開発援助は自国企業から調達と結びつけないという、いわゆる「アンタイド(ひも付きにしない)」が義務付けられている。にもかかわらず、これに縛られない中国は、中国企業からの調達を「タイド(ひも付き)」にするのが通常だ。これでは、公平な競争にはならない。

 また中国の場合、通常ビジネスとして成り立ち得ないような条件の案件でも、国有企業、国有銀行が政府支援を得て、案件を強引に獲得していく。行動基準が政治的な影響力を強めるといった、ビジネスとは別次元の思惑なのだが、こうした動きを是正させる仕組みも不可欠だ。国内生産の過剰能力のはけ口にするとの中国の思惑も見え隠れし、要注意だ。

 今回のAPECでは、こうした様々な不公正な競争条件を是正するためのルールを来年のAPECで合意することを目指して、検討することが合意された。国際ルールへの大きな一歩と言える。

 まず、昨年のG20で「インフラ整備の質」というコンセプトを日本が国際的に初めて持ち出し、中国にもこのコンセプトを認めさせた。それが第一歩だった。そしてさらに今回のAPECでは、融資する手法をも規制対象にしようとしている。中国を念頭に置いた、日本の戦略が着実に前進しているのだ。

 多くの米国企業もこうした中国のインフラ輸出のあり方には深刻な危機感を持っている。例えば、途上国での発電所案件で発電タービンの輸出を手掛ける米ゼネラル・エレクトリック(GE)もその1社だ。ベトナムなど受入国側でも強引な中国の進出には警戒感も出てきている。

 そうした中で、日本は米国、ベトナムをAPECでの共同提案者にした。それは国際的に連携して中国を牽制する戦略として大いに評価できよう。

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「中国「国家資本主義」の抑止策が日本主導で始動」の著者

細川 昌彦

細川 昌彦(ほそかわ・まさひこ)

中部大学特任教授(元・経済産業省米州課長)

1955年1月生まれ。77年東京大学法学部卒業、通商産業省入省。「東京国際映画祭」の企画立案、山形県警出向、貿易局安全保障貿易管理課長などを経て98年通商政策局米州課長。日米の通商交渉を最前線で担当した。2002年ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。2003年中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。2004年日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長。2006年経済産業省退職。現在は中部大学で教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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