アサド政権を排除したい欧米と、存続にこだわるロシアの対立で、シリア情勢が混迷している。
ロシアがシリアのアサド政権を支援している理由はいくつかある。国民の15~20%がイスラム教徒という巨大なイスラム人口を抱える自国に「アラブの春」の民主化革命を波及させたくない、武器輸出ビジネスを失いたくない、同じ強権政治のアサド政権が欧米の策謀で倒れれば次は自分が危なくなるとプーチン大統領が危惧している、といったことだ。
しかし、最大の理由は、ずばりロシアの海軍基地の存在だ。
ロシアがアサド政権を見捨てない理由
ロシアは、旧ソ連時代から、地中海に面したシリアのタラトゥース港に海軍基地(物資・技術供給所)を持っている。これは地中海と中東におけるロシアの唯一の軍事拠点だ。今年3月には同基地の地対空防衛システムの増強や駆逐艦ゼヴェロモルスクの配備を行うことを決定し、10月には空母や重航空巡洋艦が入港できるよう港の浚渫作業も行った。もしアサド政権が崩壊し、この基地を失うと、ロシアは地中海・中東での軍事行動に支障をきたし、地域での影響力が大幅に低下する。
軍事基地は、その所在国に支配力を及ぼし、衛星国(見方によっては準領土)化する手段である。ロシアは現在、アゼルバイジャン、アルメニア、クリミア半島、カザフスタン、キルギス、グルジア、シリア、タジキスタン、ベラルーシ、モルドバ、国後・択捉に軍事基地を保有し、これらの国々(ないしは地域)を衛星国化している。

いただいたコメント
コメントを書く