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「#お前なんかムスリムじゃない」が英国で拡散

ロンドン流、「テロ」との正しい向き合い方

2015年12月11日(金)

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 12月5日、ロンドン東部の地下鉄駅で男が「これはシリアの分だ」と叫びながらナイフで乗客を切りつける事件があった。警察は「テロ」事件として捜査。だが、多くのロンドン市民が「お前なんかムスリムじゃない」と冷静に反応。そのワケは?

(写真:REX FEATURES/アフロ)

 クリスマスを前にした12月5日(土曜日)。週末のイベントを楽しむ人たちで混み合うロンドンの地下鉄で事件は起きた。午後7時過ぎ、ロンドン東部のレイトンストーン駅構内で、男がナイフで56歳の男性を刺し重傷を負わせ、もう1人も軽傷を負った。駆けつけた警察官数名が29歳の容疑者をスタンガンで制圧し、逮捕。報道によれば、ナイフは刃渡り約7.5センチほどで、重傷を負った男性は病院に搬送されたが、命に別状はないと言う。

 ロンドン警視庁は事件発生のおよそ3時間後、テロ対策部隊がこの事件を「テロ」として捜査することを発表。英メディアは目撃者の証言として、男が被害者を切りつけながら「これはシリアの分だ」と叫んでいたとの情報を伝えた。

 この事件の3日前には、英議会下院が賛成多数でシリア空爆を承認していた。「これはシリアの分だ」という発言には、空爆承認に対する「仕返し」の意味が込められていたとの見方もできる。警察は「テロ」と位置付けた理由について、当初は言及を避けたが、その後の発表で、容疑者が所持していた携帯電話から、IS(自称イスラム国)関連の画像などが発見されたことが明らかになっている。

 しかし、容疑者の家族の証言では、タクシー運転手をしていた容疑者はソマリアからの移民で、夏頃から幻覚を見たり妄想に怯えたりするなど、精神に何らかの異常をきたしていたともされている。

 ロンドンでは、欧州各地同様にテロへの警戒感が高まっている。パリの同時多発テロによって英国のテロ警戒レベルが引き上げられることはなかったが、ISが台頭した去年の夏以降、5段階中上から2番目の警戒レベルが続いている。

 確かに、テロへの警戒感が高まる中でこうした事件が起きると、すぐにテロではないか、という連想が湧く。だが、その判断には慎重さが必要だろう。なぜなら、イスラム教徒に対する差別と偏見を助長し、さらなる暴力を誘発するという、負の連鎖が続きかねないからだ。

通り魔的犯罪が「テロ」?

 筆者は事件発生当時、現場から車で10分ほど離れた近くの街で小さなクリスマスのイベントに参加していた。事件から1時間半ほど後、現場近くの駅から電車を利用して帰宅したが、特に混乱もなくアナウンスなどもなかった。そのため、家に着くまで事件が起きたことを知らなかったほどだ。

 私がイベントに参加していた場所も、犯行現場も、共にロンドン東部だ。そこは、低所得者の移民が多く暮らす地域である。こうした場所で起きたナイフを使った場当たり的とも思われる犯行が、「テロ」と位置付けられることには、正直、違和感を覚えた。ISが狙うのであれば、白人を含む多数の人で混雑する中心部の繁華街やショッピングセンター、主要ターミナル駅などがターゲットになるであろうと想像していたからだ。

 実際、この時期はクリスマスのイベントがロンドン各地で多数催されている。先月パリで狙われたのも、多くの人が集まるコンサートやサッカーの会場、レストランなどだった。

 そのため、どちらかというと通り魔のような犯行が早々に「テロ」と位置付けられたことには、「結論付けるのが早過ぎないか」と感じた。こうした感覚に見舞われたのは、私だけではなかった。ソーシャルメディアでも、「テロ」と位置付けることに懐疑的な意見が見て取れた。その背景には、テロリストとイスラム教徒を混同し、イスラム教徒に対する蔑視が拡大するのではないかという懸念があるからだろう。

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「「#お前なんかムスリムじゃない」が英国で拡散」の著者

伏見 香名子

伏見 香名子(ふしみ・かなこ)

フリーテレビディレクター(ロンドン在住)

フリーテレビディレクター(ロンドン在住)。東京出身、旧西ベルリン育ち。英国放送協会(BBC)東京支局プロデューサー、テレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターなどを経て、2013年からフリーに。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授