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ありのままの自分の姿、見たい? 見たくない?

「隠れた4.0企業」が最新技術を使わないワケ

2015年11月17日(火)

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 「普段はどのサイズを着ていますか」
 「普段は…9号です」
 「では、こちらのワンピースを試着してみてください」

 福井市のアパレルショップ。その店の販売員とこんな会話を交わしたのは、2015年10月半ばのことだ。試着の際にサイズを聞かれて、答えると、そのサイズの洋服を用意してくれる。どこのアパレルショップでもよくある、何の変哲もないやり取りだ。なのに、この日は、少し複雑な気持ちになっていた。

 「もしかしたら、3Dスキャナーで体形を測って、服のサイズを自動で導き出してくれるかも」。密かにそう期待していたからだ。

 記者はこの日、生地メーカーのセーレンを取材するため、福井市にある同社の本社を訪れていた(福井市のアパレルショップというのは、本社1階にある直営店のことだ)。詳細は日経ビジネス11月16日号「身近にあった!インダストリー4.0」を読んでほしいが、同社は2015年4月、一般の消費者向けにワンピースのオーダーメードを始めた。ただし、昔ながらのオーダーメードではない。IT(情報技術)を活用することで、47万通りの色・柄を“バーチャル試着”できるのが売りのサービスである。選べるワンピースの種類が47万通りもあり、実質的には「一品モノ」を3週間で作ることができる。「これはインダストリー4.0で言うところのマスカスタマイゼーション(大量個別生産)だ!」ということで、突撃した。

47万通りのワンピースを“試着”できる

 「ITを活用」「バーチャル試着」。こうしたワードから記者が連想したのが、体形の3Dスキャンだった。この技術は既に実用化されていて、アイドルのフィギュアを作る時にアイドルの体形をスキャンしたり、エステティックサロンで顧客の体形管理をしたりするのに使われている。最近でも「セブン&アイ、一部店舗に3D体形測定器 試着せず服選び(10月23日の日本経済新聞電子版)」といった報道があった。「3D体形測定はオーダーメードに向くはず」と、セーレンのショップでも、試着から注文までのすべてがバーチャルで進んでいくと思い込んでいた。

 ところが、だ。冒頭のやり取りの通り、セーレンのショップでは、最初の1着は実際に着る。ワンピースの形状やサイズ感が気に入るかどうかを、試着して確認し、「丈をもう少し短くしたい」とか、「二の腕が気になるので袖をもう少し長くしたい」といったやり取りを、試着の状態を見ながら販売員と話す。その上で、自分の姿をカメラで撮影。その画像を72インチのモニターに映し、そこからバーチャル試着の世界に入る。具体的には、タブレット端末を使って、好きな色や柄を選ぶと、モニターの中の自分が新しい色や柄を選ぶたびに「着替えて」いくのだ。

 試着をするのが嫌だったわけではないが、期待と違うことに少し戸惑った。製造におけるIT活用を他社に先駆けて推進してきたセーレンだけに、3Dスキャナーの存在を知らなかったとは考えづらい。スキャナーを使ってみたが精度が出なかったのか。あるいは、設備費用が高すぎて採算が合わなかったのか。「やらなかった理由」は何なのだろう。悶々としながらセーレンの川田達男会長のインタビューに望むと、川田会長はこちらの疑念を見透かしたように、こう話し始めた。

人の好みはバラバラなんだ

 「実際にやってみると、事前に考えていたこととのギャップが出てきたんです。最初は『体形やサイズは自動で測って』などと思っていたんですが、実際には人の好みはバラバラ。ゆったり着たいとか、ぴっちり着たいとか。なので、自動で測るよりも種類をたくさん用意することのほうが大事だということに気付いたのです」

 確かに、その通りだと思った。

 記者は「ゆったり着たい派」である。連日の深夜の食事と運動不足で、見るに堪えない贅肉が増えてきている。できるだけ二の腕が隠れるように、半袖の服では少し大きめのサイズを選ぶこともある。しかも、どんなシーンで着る服かによって、好みの「ゆったり」と「ぴっちり」のさじ加減は変わる。作る側にとっては、さぞ厄介だろう。

 結局、セーレンは7~13号までをそろえた上で、少なくとも1回は実際に試着してもらう方法を選んだ。「完全なバーチャル試着」を提供していれば、華やかな新技術が好きなメディアからのウケはもっと良かったかもしれない。だが、セーレンはそれよりも、「お客さんが何を望んでいるかを考えた」(川田会長)。

 この考え方は、実際に試着した後にも発揮されていた。

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「シーメンス、GEだけではない 身近にあった! インダストリー4.0」のバックナンバー

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「ありのままの自分の姿、見たい? 見たくない?」の著者

佐藤 浩実

佐藤 浩実(さとう・ひろみ)

日経ビジネス記者

日本経済新聞社で電機、機械、自動車を6年間取材。13年4月に日経ビジネスへ。引き続き製造業を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官