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脳内エア吹奏楽団に出迎えられてモスクワ到着

ビミョーなお土産、私服警官の影、ロシア鉄道の不思議とともに

2016年2月27日(土)

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 2等車での長時間移動に慣れた身にとって、1等車の旅は確かに落ち着いて優雅なものだった。2等車のコンパートメントは日中ドアを開け放しにしているところが多く、トイレやお湯を使う人がしょっちゅう出たり入ったりするので、通路を歩いていても生活感が伝わってきた。

 ところが、この1等車では、コンパートメントのドアはどこも締め切ったまま。人の声も聞こえないものだから、はたして何人乗っているのやら。そもそも定員が2等車の半分だから、トイレに行く頻度も半分になるわけで、あまり人の気配を感じなかったのである。

1等車のコンパートメントから見る車窓は、まるでテレビの画面のよう

 そんな静かな環境の中、長時間停車があるたびにホームに出たり、ドアを開けて通路側の車窓を眺めたりしている落ち着きのない私たちは、まるで異質の存在だった。

 アネゴ車掌にとってみれば、乗客は静かだし、列車は駅にあまり停まらない特急タイプだったから比較的ゆとりのある仕事だったのだろう。つまり、私たちは、彼女にとって格好の気分転換の対象であったに違いない。

質実剛健でアヴァンギャルドなマグカップを購入

 前回の記事(モスクワ行き1等車の車掌さんはアネゴ肌)でも軽く触れたアネゴ車掌からの「お土産買え買え攻撃」は断続的に実行されていた。車掌室前に貼りだされた写真入りお土産一覧図をチェックして、まず買おうと決めたのは特製マグカップである。価格は500ルーブルだから、ここではそこそこいい値段である。

 ちなみに、この原稿を書いている2016年2月下旬の為替レートは1ルーブル≒1.45円だが、2015年9月に旅行をした時点での為替レートは1ルーブル≒1.8円、成田空港での両替は1ルーブル≒2.2円だった。

いわく表現し難い、なかなかユニークなデザインのマグカップ

 手に持ってみるとずしりと重く、まさにロシア的な質実剛健さ。一方で、ご覧のようにロシアン・アヴァンギャルドと呼びたくなる大胆なデザインである。実際にマグカップとして使ったら、ちょっとぶつけただけで欠けてしまいそうなので、これは永遠に部屋の置物となるだろうと直感した。

 アネゴ車掌は、また例の大きなクマ車掌のぬいぐるみを引っ張りだしてきて、自分の顔にくっつけて「これも買え」アピールをする。しかも、小さいサイズもあるという。「それならオーケー」というと、アネゴ車掌は車掌室の魔法の扉から、ひと回り小さなぬいぐるみを取り出してきた。

 ところが、それは男のクマ車掌であった。

ユーモラスな車掌の人形。やはりこの右側に女性の車掌も欲しかった

 「男の車掌じゃなくて、女の車掌がほしい」と土産品一覧の写真を指さしていうのだが、彼女は首を振って「ニエット」という。

 その後、ほかの車両まで探しにいってくれたようなのだが、女のクマ車掌の小さなぬいぐるみは品切れだったようだ。誰しも、欲しがるものは同じなのか。

 その代わりに買ったのが、上の素焼きの人形。実は、これも男と女の車掌のペアで、左右対称の格好をしているので両方買いたかったが、やはり男だけが売れ残っていた。これは200か300ルーブルくらいだった。

 あとは、子ども向けの機関車の本だと思って買ったら、幼児向けのおもちゃセットだったというもの。これも値段は忘れたが、確か150か200ルーブルくらいだったと思う。

塗り絵やパズルなど、いくつかのおもちゃがセットになっている

「ニージュニイ・ノヴゴロド」は「下新庄」?

 最終日は、ちょうど夜中の0時をまわったころにモスクワとの時差がなくなった。

 そして、夜が明けて最初の長時間停車は、9時38分着のニージュニイ・ノヴゴロドである。ソ連時代の名称であるゴーリキーといえば、聞いたことがある人もいるだろう。戯曲『どん底』で知られるマクシム・ゴーリキーは、ここの出身である。

 人口130万人を超える大都会で、駅の周辺には下の写真のようなカラフルな集合住宅が建ち並んでいた。

ニージュニイ・ノヴゴロド駅に到着する直前に見えたカラフルな集合住宅

 「これは、冬になって吹雪で視界が悪くなっても、自分の帰る建物を間違えないためじゃないの?」

 SNSでこの写真を見た知人が言っていたが、たぶんそうじゃないと思う。

 現在の名称ノヴゴロドの「ノヴ」は「新しい」、「ゴロド」は「町、都市」という意味。日本風にいえば新町である。日本でもあちこちに「新町」があるように、ロシアにもこの名前の都市がいくつもあるために、ここでは「下」を意味する「ニージュニイ」を付けて区別しているのだそうだ。「ニージュニイ」は、寝台の下段を示す文字として乗車券にも印刷されていた。

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「脳内エア吹奏楽団に出迎えられてモスクワ到着」の著者

二村 高史

二村 高史(ふたむら・たかし)

フリーランスライター

1956年東京生まれ。東京大学文学部卒。小学生時代から都電、国鉄、私鉄の乗り歩きに目覚め、その後も各地の鉄道を乗り歩く。現在はフリーランスの物書き。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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