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憲法改正の流儀 [ドイツ編]

長く、細かく、柔らかくも、改正の限界を自ら規定した歴史的背景

2016年10月7日(金)

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 日本国憲法はその成立から一度も改正を経験してない。他国の改正の頻度と比較してその「おかしさ」を指摘する政治家、論者がいる。

 だが逆に言うと、他国はなぜ頻繁に憲法を改正するのだろうか。その理由はなにか、そもそも他国の憲法はどのようになっているのか。憲法を知ることは、その国の文化やものの考え方を知る面白さもある。

 そこでこれから3回に渡って、日本国憲法の比較対象として取り上げられることが多い独・仏・米3カ国の憲法改正のあらましを専門家にうかがうことにした。他国の「憲法改正の流儀」を知ることは、わが国の改憲論議にも大いに参考になるに違いない。

 第1回は日本と同じように第二次世界大戦後に憲法を作り直したドイツ。東京大学法学部宍戸常寿教授に話をうかがった。

戦後60回、憲法を改正したドイツ

宍戸 常寿(ししど・じょうじ)
東京大学大学院法学政治学研究科教授。主な著作に「憲法裁判権の動態」(弘文堂、2005年)、「憲法 解釈論の応用と展開〔第2版〕」(日本評論社、2014年)など。総務省「AIネットワーク化検討会議」など、数多くの政府関係の研究会メンバーでもある。

 長い。長いし細かい。これがドイツの憲法に対する第一印象だ。

 条文の数は146条と日本国憲法の103条(補則含む)と比べて約5割増しだが、個々の条文の「項」と文章が長い。岩波文庫の「世界憲法集第2版」でページ数を比較すると、日本国憲法が27ページなのに、ドイツの憲法は107ページもある。同書では条文の詳細を省略している箇所もあるので、4倍超のボリュームがあることになる。ドイツはこの憲法を戦後60回、のべ120か条も改正してきた。ほぼ毎年改正しているようなものである。

なぜこんなにドイツの憲法はボリュームがすごいのでしょうか。

宍戸 「まず国が連邦制というのがあります。中央政府と各ラント(「州」「領邦」とも訳される地方の政府)の権限分配について記さないといけない。国の政治の意思決定プロセスを動かすので、国家機関の権限と制限を書き込んだり、もちろん人権規定もあるんですが、かなり技術的な側面が強いのです。ドイツ人はかなり細かいんですね」

 ドイツの憲法は正式名称「ドイツ連邦共和国基本法」という。1949年、西ドイツ時代の大学都市ボンに議会評議会のメンバーが集まり、憲法を制定した。その地名にちなんで「ボン基本法」と呼ぶこともある。

 宍戸教授によると、西ドイツは「かなり人工的国家だった」という。

「今のドイツの原型は1815年のウィーン会議で作られたものなんですが、ドイツ帝国、ワイマール共和国もプロイセン地方が大部分を占めていました。ところが第二次世界大戦で負けて東西に分割されたとき、プロイセン地方が東側に行っちゃったんですね。わかりやすくするために敢えて乱暴なたとえ方をすると、日本から本州を除いた地方だけで国家を作ったようなところがあるんです」

「さらにその西ドイツのもとになる各ラントも、米英仏の分割統治をしやすくするためにかなり人為的に占領ブロックを区切って、無理矢理統廃合して作られたものでした。そうしたこともあって、中央政府とラントの権限分配を定める必要があり、条文がやたら長くなったんです」

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「憲法改正の流儀 [ドイツ編]」の著者

神田 憲行

神田 憲行(かんだ・のりゆき)

ノンフィクション・ライター

1963年、大阪市生まれ。関西大学法学部卒業。大学卒業後、ジャーナリストの故・黒田清氏の事務所に所属。独立後、ノンフィクション・ライターとして現在に至る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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