東京五輪の開幕が刻一刻と近づく中、刻一刻と日本のスポーツ市場が衰退している。2015年の市場規模は前年と比べて7%縮小し、2兆8000億円となった。ひるがえって米国。2014年は約54兆円に達し、過去10年で約2倍に拡大した。
なぜ日本のスポーツ市場が縮小の一途をたどるのか。その理由を象徴しているのが、今回の新国立競技場をめぐる騒動だ。
2015年11月30日に発売された書籍『狂騒の東京オリンピック 稼げなければ、メダルは獲れない』では紆余曲折が続いた新国立劇場の問題の本質を指摘した。本連載では、同書の内容を最構成して、そのエッセンスを紹介する。
日本の新たなシンボルが間もなく決定する。
文部科学省傘下の日本スポーツ振興センター(JSC)は12月14日、新国立競技場の設計・施工者の公募に応じた建設会社の技術提案書を公表した。応募したのは、建築家の隈研吾と組んだ大成建設などのグループと、伊東豊雄と組んだ竹中工務店などのグループの2者だ。偶然にも、どちらの提案も「杜のスタジアム」と銘打つ。
12月下旬に1案に絞り、2020年4月の竣工期限に間に合わせるべく、すぐに着工する。


世界の視線が集まる2020年夏の東京五輪の開会式で、隈と伊東のどちらかが設計した新国立競技場が、日本のシンボルに昇華する。
実は、大会後に新国立競技場を野球場に改修して、読売巨人軍の本拠地にするという構想がこの夏まで存在していた。しかし、国家の競技場が、「巨人のシンボル」に変質することを恐れた安倍政権によって、構想は握りつぶされた。
果たして、国家を代表する競技場など、今の日本に必要なのだろうか。日本人の一人ひとりに問われている。
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