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特殊ガラスメーカーが超大型望遠鏡にかけた夢

「下町ロケット」さながら、宇宙観測への孤軍奮闘

2015年12月8日(火)

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ハワイのマウナケア山頂に建設が予定されている世界最大級の超大型天体望遠鏡「TMT」。日本、米国、カナダ、インド、中国の5カ国が参画する国際プロジェクトだ。2024年の運用開始を予定している。そして、このTMTの建設プロジェクトの裏には、「下町ロケット」さながらに、日本を代表する光学・特殊ガラスメーカーの孤軍奮闘があった。

 現在、最も大きな日本の天体望遠鏡と言えば、ハワイのマウナケア山頂に建設されている「すばる望遠鏡」だ。すばる望遠鏡は1999年の運用開始以来、目覚ましい成果を上げてきた。中でも特筆すべき最大の成果は、2006年に世界で初めて捉えることに成功した約129億年前の銀河の光だ。約137億年前の宇宙誕生にあと8億年まで迫る勢いだ。

 天体望遠鏡は、宇宙からやってくる光を受ける鏡の面積が大きければ大きいほど、より遠くの天体を観測することができる。そのため、現在、新たに3つの超大型天体望遠鏡の建設計画が進められている。その1つが、すばる望遠鏡に隣接予定の「TMT(=Thirty Meter Telescope)」だ。

ハワイのマウナケア山頂に建設予定の世界最大級の超大型天体望遠鏡「TMT」の完成予想図(提供:国立天文台)

 宇宙からやってきた光は、まず、「主鏡」で受け止められ、「副鏡」「第3鏡」を経由して、観測装置に送られる。従って、主鏡は、天体望遠鏡の“要”となる。

 すばる望遠鏡の主鏡は、口径8.2メートルの「1枚鏡」で、1枚鏡としては、2007年に運用が開始された大双眼望遠鏡(LBT=Large Binocular Telescope)に次いで、世界第2位の大きさを誇る。

 主鏡は、ガラス板の表面にアルミニウムなどの金属をメッキして作っている。近年、天体望遠鏡の大型化に伴い、徐々に1枚鏡を製造するのがむずかしくなっていった。そこで、現在は、複数の鏡をつなぎ合わせて、1枚の鏡にする「分鏡」方式が主流となってきている。

 口径30メートルの主鏡を持つTMTも、分鏡方式を採用している。対角1.44メートル、一辺72センチの六角形の鏡を492枚つなぎ合わせて、口径30メートルを実現する。

 集光量は、主鏡の面積に比例するため、TMTの集光量は、すばる望遠鏡の実に約13倍になる計算だ。解像度もすばる望遠鏡の3.7倍となる。

「月の上のホタルの光が見える」

 加えて、すばる望遠鏡が広い視野を持っているのに対し、TMTの強みは、視野は狭いものの、遠くからの弱い光を観測できることだ。そのため、TMTで観測すると、「月の上のホタルの光が見える」、「東京タワーから富士山の頂上で歩いているアリの様子が見られる」という。

 今後、日本では、すばる望遠鏡とTMTの両方の強みを生かし、さらなる成果を出していく計画だ。すなわち、すばる望遠鏡を使って、天体を効率良くスクリーニングし、その中から、興味深い天体が発見されれば、それをTMTを使って細かく観察していこうというわけだ。

 TMTの運用が開始されれば、宇宙誕生直後の一番星や、約135億年前に誕生したと言われる最初の銀河の観測、さらに、地球外生命体の発見がいよいよ現実のものとなるかも知れない。2011年にノーベル物理学賞受賞で話題となった「ダークエネルギー」の正体の解明も夢ではない。1日も早い運用開始が待たれる。

 そして、このTMTの建設プロジェクトの裏には、「下町ロケット」さながらに、日本を代表する光学・特殊ガラスメーカーの威信をかけた孤軍奮闘があった。TMTの要となる口径約30メートルの主鏡の製造の受注を勝ち取ったオハラだ。

「TMT」の主鏡となる“ゼロ膨張ガラス”。対角1.44メートル、一辺72センチの六角形の鏡を492枚つなぎ合わせて、口径30メートルを実現する(提供:オハラ)

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「特殊ガラスメーカーが超大型望遠鏡にかけた夢」の著者

山田 久美

山田 久美(やまだ・くみ)

科学技術ジャーナリスト

早稲田大学教育学部数学科出身。都市銀行システム開発部を経て現職。2005年3月、東京理科大学大学院修了(技術経営修士)。サイエンス&テクノロジー、技術経営関連の記事を中心に執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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