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「今までにないもの」をいかに産み出すか?

最相葉月×池上彰 特別対談(2)

2016年3月24日(木)

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 『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』(ポプラ社)で東京工業大学の学生たちに、「科学者は一生涯を賭けて研究するテーマをどうやって選んできたのか?」を講義した最相さん、マイケル・サンデルばりに歩きながら学生に質問する授業ができなかったのが心残りだそう。大丈夫、サンデルの授業にははからくりがあります。連載2回目は、最相さんが追いかけた星新一のショートショートの手法「要素分解共鳴結合」がキーワードになります。コンピュータにはできない、偶然の神様が新しい何かを産む? ノンフィクションでも科学でも。

最相:東工大での授業で、池上さんは講義室を歩き回りながら講義をされるのですか? 私のイメージでは、マイクを片手に講義をして、そばに座っている学生に、ぱっと質問なさる。

池上:……ほとんどやらないですね。基本的には壇上で板書をし、普通に講義をしています。もちろん、学生が積極的に参加できるテーマのときは、どんどん質問をぶつけていきます。18歳選挙権のようなテーマについては、彼らも当事者ですから、「どう思うかな」と問いかけると意見は活発に出てきますし、出てきた意見に対して反対意見も上がってくる。そんなときは、私は意見を言わずに交通整理役に徹します。

最相:今回の東工大の講義では、内容が専門的になることもあって間違ったことを言わないように資料を見ながら話すことが多かったため、学生と対話しながらしゃべるというのはなかなかできませんでした。そこは反省しています。最後まで慣れませんでした。

池上:マイケル・サンデル教授のような授業ですね。あれはできないですよ。

最相:そうですか。サンデル教授と学生たちとのやりとりは面白いですよね。

サンデル教授の秘密、地学と生物学の疑問

池上:実はサンデル教授の授業には、下準備があるんです。授業を支える助教や大学院生やOBがたくさんいる。学生にはあらかじめどの本のどこを読んでおくべきか伝えてあり、さらには学生たちは事前に助教や大学院生たちから指導を受けている。十分に準備された状態で授業がスタートし、サンデル教授がおもむろに登場する。学生たちに問いかければ、打てば響く状態ができている。だから、「いい質問」や「いい答え」が返ってくる。

最相:なんだ、そうだったんですね。

池上:ええ。以前サンデル教授にインタビューしたときに直接聞きました。なるほどやっぱりと少し安心しました。今回、最相さんはどんな準備をして講義に臨みましたか。

最相:前の週の講義で、翌週は誰がゲストで来るかを予告し、その方はどういう研究をされている方かについても簡単に告知をし、著書についても紹介しました。当日は、最初の15分から20分ぐらいは、私がゲストの仕事をざっくりと説明し、それから壇上での公開インタビューに入ります。そのためにはゲストの著作はもちろん、主要な論文をチェックしておく必要はありました。

最相葉月(さいしょう・はづき)/1963年生まれ。兵庫県神戸市出身。関西学院大学法学部卒。著書に『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『青いバラ』『星新一 一〇〇一話をつくった人』(講談社ノンフィクション賞、大佛次郎賞、日本推理作家協会賞、日本SF大賞、星雲賞)、『東京大学応援部物語』『ビヨンド・エジソン 12人の博士が見つめる未来』『セラピスト』『れるられる』『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『辛口サイショーの人生案内』など。児童書に『調べてみよう、書いてみよう』。 (写真:大槻純一、以下同)

池上:学生の反応が最も良かったのは、どなたがゲストのときでしたか?

最相:最も質問が活発に出たのは、地震学者の石田瑞穂先生にいらしていただいたときですね。東工大にも著名な地震学者の丸山茂徳先生がいらっしゃるので身近だったのでしょうか。今回講義をして、よくわかったのは、東工大の学生さんたちはみんな物理学が好きなんですね。

池上:そうですね。みんな物理学が好きです。一方で、地震の話でいうと地学はほとんど学んでいない。高校時代に履修すらしていない人が大半です。

最相:ええ、そうなんですよね。

池上:地震学の世界では、今それが大きな問題になっています。地学は必修ではなくなっているので、学生の多くは物理と化学は学んでいても、地学を学んでいない。だから、物理的現象として地震にアプローチはできても、現実に地震が起きている地球や地形についての地学的な知見がない。なので、地震学が「机上の空論」となりかねない。地学以上に問題なのは、いまの理系の学生たちは生物学も高校で履修していない人が多い。人間という生き物を扱うのに、大学医学部で生物を履修していないケースも珍しくない。これは大問題だと思います。

最相:そもそも受験科目に生物を選ばなくてもいいそうですね。生物学はすべてに関係する学問で、いわば必須教養なのですが。理系学生ほど高校のときに生物をちゃんと勉強せず、化学と物理学ばっかりに没頭していた子が多いというのは残念です。私もその点については懸念していたので、オワンクラゲを題材に「生物はなぜ光るのか」を突き詰め、ノーベル化学賞をとられた下村脩先生を筆頭に、「進化生物学」や「バイオミミクリー」「遺伝子工学」「感染症」など生物に関係する分野の研究者にいちばん多く来ていただくようにしました。

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「「今までにないもの」をいかに産み出すか?」の著者

池上 彰

池上 彰(いけがみ・あきら)

ジャーナリスト

1950年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。報道局主幹を経て、2005年3月よりフリージャーナリストとして活躍中。2012年4月から東京工業大学で東工大生に「教養」を教えている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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