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「中道左派にはもう頼れない」欧州移民の悲哀

“移民の味方”である民族政党は国家分断の源?

2016年6月16日(木)

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 オランダの中でもハーグ市ほどオランダらしい都市はない。政庁所在地であるビネンホフ地区にはグリム童話から抜け出てきたかのような古風なゴシック建築がそびえ立つ。

 そこから1マイルほど西に向かうとボザール様式の平和宮が建っている。ここは国際司法裁判所の本部だ。また、北側に位置するガラス張りの財務省は、財政規律を教条的に重んじる人々の総本山である。

オランダの極右政党、自由党のウィルダース氏(写真:AP/アフロ)

 一方、東に向かって1マイルほど歩くと(自転車でもいいのだが)、伝統的なオランダの風景とは異なるものが見えてくる。ガーナ人が経営する理髪店。トルコ風ティーハウスの数々。女性たちは頭からスカーフをかぶっている。ジュラバ(モロッコの民族衣装)を着た男性たちは夕べの祈りを捧げるため、道路に面したモスクへと足早に入っていく。

 モスクの向かいにあるのは「アミンのモロッコ風肉店」。その日の午後、中近東のサンドイッチ「シュワルマ」がぎっしり並ぶ冷蔵カウンターの後ろでは、オーナーの息子で31歳のジャマールがコンピュータの設定に取り組んでいた。

 彼のような人物こそ、この国の伝統的なアイデンティティと新たな移民コミュニティの間に存在する断絶の橋渡し役となり得る存在だ。ジャマールは2歳のときに家族とオランダに渡ってきた。エラスムス大学で経営学の学位を修得し、これまでに複数の中小企業でデータ解析の仕事に携わった経験を持つ。だが昨年になって企業世界に見切りをつけ、父親の精肉店に戻った。

 「オランダ社会では人種による選別が至る所で行われている」と彼は言う。最後に勤めた企業では、白人の同僚が欧州出身でない求職者を拒絶する理由をあれこれ並べ立てるのを見て落胆したという。

ムスリムや少数派民族を“代表”する民族政党が台頭

 移民という経歴を持つオランダ人の大半がそうであるように、ジャマールも過去の選挙では中道左派の労働党に票を投じてきた。だが今は新しくできた「デンク」への乗り換えを検討している。デンクは「考える」という意味。この政党は、ムスリムや少数派民族に対して自らを売り込んでいる。

 ムスリムや移民の多くは10年もの間、反ムスリム主義・反移民主義を掲げる政治家、ヘルト・ウィルダース(極右の自由党に所属。支持率では現在首位にある)からの執拗なまでの侮辱を受け続けてきた。彼らは今、労働党などの主流政党は自分たちを守ってくれないと感じている。

 デンクが来年の総選挙で数議席以上を獲得することはないだろう。だが、この政党は極めて重大な疑問を投げかけている。すなわち「外国人排斥の機運が高まったとき、欧州の少数派民族はこれまで投票してきた中道左派政党(幅広い政策を掲げる)を頼ることができるのか」「少数派民族は自らの手で政党を立ち上げるべきか」「そうすることは国の分裂を進めるだけなのか」といった問いである。

中道左派離れが始まった

 欧州全体において、ムスリムや非白人は中道左派に投票する傾向がある。オーストリアでは少数派民族の68%が最近の総選挙で社会民主党に票を投じた(白人は32%)。フランスで行われたある調査では、2012年の大統領選挙でムスリムの93%が社会党所属のフランソワ・オランド氏に投票したことがわかった。

 だが少数派民族の人たちは往々にして、中道左派政党は自分たちからの支持を当然視し、それに見合う見返りを与えてくれないと感じている。2012年にオランド氏に投票するため投票所に足を運んだムスリムたちは、2014年の市会議員選挙では家から出なかった(彼らの多くは社会党政権が同性婚を合法化したと非難した)。フランスに限ったことではなく、中道左派政党が移民やテロリズムに対して厳しく臨もうとするとき、少数派民族は裏切られたと感じる。

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