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「高福祉・低負担」の幻想から、いかに脱するか

神津里季生「連合」会長 × 山本一郎 特別対談(2)

2016年6月27日(月)

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6月某日、東京・御茶ノ水の連合(日本労働組合総連合会)本部。神津里季生会長を山本一郎氏が訪ねた。労働者の関心が高まっている「社会保障」の諸問題について、連合の考え方や取り組みを聞くためだ。特別対談その2をお届けする。
(その1は こちら

山本一郎(以下、山本):現状の日本の政治の問題は、リーダーの不在だと思うんです。旗をしっかり立てられる人がいない。だから「アベノミクス」など、決して色がいい旗ではなくても、立っているだけで人がそこに集まっていく。一方、民進党の岡田代表は、ばーんと旗を立てるタイプかというとそうでもないんですよね。

神津里季生(以下、神津):けっこう、遠慮をされる方だなという印象があります。

山本:今回の都知事選も、これから東京都が抱えるさまざまな問題に対して、明確なビジョンという旗を立てて、それを軸にして総合的に政策をつくれる人はいないように見えます。現在東京都に住む人は、価値観も家族構成もバラバラで、LGBTや在日外国人などの多様な方々も一緒に暮らしているわけです。そうした多様な人達とどうやって少子高齢社会を生き抜いていくか。それは政治家がはっきり道を示さないと本来はいけないのに。

神津:そうしたビジョンがはっきりしないと、候補者同士で論争もできないですよね。有権者が中身をよく理解せずに、「アベノミクス」などの旗が立っているだけましという基準で投票するようになると、政治の劣化は止まらない。

神津 里季生(こうづ・ りきお)
1956年、東京生まれ。1979年、東京大学卒業後、新日本製鐵に入社。新日本製鐵労働組合連合会会長、日本基幹産業労働組合連合会委員長などを歴任。2013年から連合事務局長を経て、2015年、第7代連合会長に就任。(写真:菊池くらげ、以下同)

山本:目指す社会像をはっきり打ち出すなら、低福祉・低負担、つまり社会福祉を切り捨てて税金を安く抑えて夜警国家的にやっていくのか、高福祉・高負担で増税はするけれど社会福祉は手厚くするのか、その2択になるはずなんです。しっかりとしたセーフティネットを用意するのだ、社会保障を充実させる高福祉なのだといえば、税額を引き上げて高負担にしなければならない。だけど今アベノミクスが打ち出しているのは、高福祉・低負担というありえないファンタジーなんですよ。

神津:そうとは、多くの国民は意識していないでしょうけどね。

山本:何ヵ月後、何年後かは分かりませんが、おそらく安倍首相が辞めるときに、日銀が良く分からない状態に陥ったりして、ようやく人々は高福祉・低負担というありえない社会像を目指していたことに気づくんだと思います。次世代へのツケで現世代が飲み食いしているのと同じです。アベノミクスでやっている経済政策は、けっきょくある種の「改鋳令」と同じなんですよね。金の小判に他の金属を混ぜて質を落としている。ただ、経済の規模が大きいから全体に毒がまわるまで時間がかかっているだけじゃないかと怖れます。アメリカの景気が悪化して、資本が日本から引き上げられたら、残るのはゴミだらけですよ。

神津:そうなったときに、真っ先に影響が出るのは社会保障ですよね。

山本:最初に切り捨てられるのがそこだと思います。充実した社会保障制度を頼りに生きている、医療や年金や介護で暮らしている人たちが、最初に命綱を切られてしまう。では、慢性疾患に苦しむ人の日々の薬代の負担を増やすのか、人工透析などの治療代を引き上げるのか。それは本来ならば一番やってはいけないことで、お金のない人から順番に死んでいく社会になってしまいかねません。そう考えるとけっこうこわい状況ですよね。だからこそ、本来の「低福祉・低負担」か「高福祉・高負担」かという議論に立ち戻る意味でも、野党にはがんばってほしいところですが、民進党のポスターの「まず、2/3をとらせないこと。」というキャッチコピーはなんなんでしょうか……。

山本一郎(やまもと・いちろう)
1973年、東京生まれ、1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。東京大学と慶應義塾大学で設立された「政策シンクネット」では高齢社会対策プロジェクト「首都圏2030」の研究マネジメントも行う。

コメント2件コメント/レビュー

>税額を引き上げて高負担にしなければならない。だけど今アベノミクスが打ち出しているのは、
>高福祉・低負担というありえないファンタジーなんですよ。
→消費税、株式譲渡や配当にかかる税率は上がっています。一概に「低負担」と言い切るのもいかがなものかと思います。

>何ヵ月後、何年後かは分かりませんが、おそらく安倍首相が辞めるときに、日銀が良く分からない
>状態に陥ったりして、ようやく人々は高福祉・低負担というありえない社会像を目指していたこと
>に気づくんだと思います。
→「よくわからない状態」とはいったいどういう状態ですか?闇雲に危機感を煽っているようにしか思えません。金融緩和の事を批判したいのか、財政規律について批判したいのか、意味不明です。

ダラダラ残業についてはほとんど同意見です。ただ、私は会社側が残業をしなくても十分な賃金を払うorベア期待を労働者に持たせるとったことが必要ではないかと思います。もちろん、デフレ不況が20年も続いてきた中で、これらを維持するのは難しい事ですが……。会社が十分な賃金をくれない、しかも転職もしにくい、となれば目先の賃金を得る為に「ダラダラ残業」することが労働者からすると合理的です。

>悪循環ですよね。貧困によって余裕がなくなり、人をバッシングすることによって、社会からさら
>に助け合いの雰囲気がなくなっていく。日本の社会は、意見や立場が違っても、話し合いで合意形
>成をはかってきたのが良いところだと思うんです。多岐にわたる社会問題を解決するには、合意形
>成が不可欠です。そういう良い部分は、もう一度復活させていきたいですね。
→同感です!余裕がなくなったのは不景気が長く続いたからではないかと思っています(バブルを知らないので、本当に好景気だと余裕があるのかは分かりませんが……)。
政治家がいたずらに対立するのではなく、一致できる点をもっと見いだせるようになることを期待しています。そしてメディアや発進力のある方々も対立を煽るのではなく、妥協点をもっと記事にしていただけると良いと思います。(2016/06/27 20:30)

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「「高福祉・低負担」の幻想から、いかに脱するか」の著者

崎谷 実穂

崎谷 実穂(さきや・みほ)

ライター/編集者

北海道札幌市生まれ。人材ベンチャーでコピーライティングを経験後、広告制作会社で新聞広告を担当、100名近くの著名人などに取材。2012年に独立。ビジネス系の記事、書籍のライティング・編集を中心に活動。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

>税額を引き上げて高負担にしなければならない。だけど今アベノミクスが打ち出しているのは、
>高福祉・低負担というありえないファンタジーなんですよ。
→消費税、株式譲渡や配当にかかる税率は上がっています。一概に「低負担」と言い切るのもいかがなものかと思います。

>何ヵ月後、何年後かは分かりませんが、おそらく安倍首相が辞めるときに、日銀が良く分からない
>状態に陥ったりして、ようやく人々は高福祉・低負担というありえない社会像を目指していたこと
>に気づくんだと思います。
→「よくわからない状態」とはいったいどういう状態ですか?闇雲に危機感を煽っているようにしか思えません。金融緩和の事を批判したいのか、財政規律について批判したいのか、意味不明です。

ダラダラ残業についてはほとんど同意見です。ただ、私は会社側が残業をしなくても十分な賃金を払うorベア期待を労働者に持たせるとったことが必要ではないかと思います。もちろん、デフレ不況が20年も続いてきた中で、これらを維持するのは難しい事ですが……。会社が十分な賃金をくれない、しかも転職もしにくい、となれば目先の賃金を得る為に「ダラダラ残業」することが労働者からすると合理的です。

>悪循環ですよね。貧困によって余裕がなくなり、人をバッシングすることによって、社会からさら
>に助け合いの雰囲気がなくなっていく。日本の社会は、意見や立場が違っても、話し合いで合意形
>成をはかってきたのが良いところだと思うんです。多岐にわたる社会問題を解決するには、合意形
>成が不可欠です。そういう良い部分は、もう一度復活させていきたいですね。
→同感です!余裕がなくなったのは不景気が長く続いたからではないかと思っています(バブルを知らないので、本当に好景気だと余裕があるのかは分かりませんが……)。
政治家がいたずらに対立するのではなく、一致できる点をもっと見いだせるようになることを期待しています。そしてメディアや発進力のある方々も対立を煽るのではなく、妥協点をもっと記事にしていただけると良いと思います。(2016/06/27 20:30)

この記事で指摘されている事は、全くその通りだと思う。税収の2倍もの支出を20年以上の長きにわたって繰り返し、次世代には「破綻」寸前に引き継ぎを企んでいるとしか思えない。子を持つ親としては、慚愧に堪えない。なので、「財政再建」を第一に上げる政党に投票したいが、どの党も不人気な政策は打ち出せないでいる。結果、与野党揃って金を使う方の政策ばかり訴えている。借金は借りた者が返済するのが大原則であり、国債といえども例外であってはならない。特に、少子化で既に人口が減少し始めており、100年後には半減すると分かっている後世代にとんでもない莫大な借金の返済を押し付けようとしている。自分の尻も拭けない政治家たちにこれ以上政治を任せたら、子供達が定年を迎える30年後には悲惨な状況しかあり得ない。なのに若い世代は怒りを政治にぶつけることもせず、「誰に投票したら良いか分からない。」なんて平気で言っている。自分たちが必要とする政治家がいないなら、自分達で新たな党を結成すれば良いではないか。そうして、「老人の老人による老人のための政治」を止めさせよ!(2016/06/27 11:00)

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