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イヤラブル端末、耳で個人を特定し、IC券にも

NEC、広島市立大学、ソニー、長岡技術科学大学

2016年7月12日(火)

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日常的に装着するイヤホンの機能拡大の流れから生まれたイヤラブル(耳装着型)端末。手軽さだけでなく、耳から得られる情報の幅広さも明らかになり、注目が高まっている。装着時の煩わしさから一時のブームに終わりかねないウエアラブル端末の救世主になるか。

耳の反響音は人によって異なる
●NECが開発したイヤホン型個人認証システム
(写真=的野 弘路)

 腕時計、メガネ、衣服、指輪…。身に着けたままデータを収集したり操作したりできる情報機器「ウエアラブル端末」が今、続々と登場している。その一方で、スマートフォン(スマホ)のように地域や世代を超えて普及するかどうかは疑問視されている。ウエアラブル端末は、違和感なく装着できて初めてスマホより高い利便性を発揮するが、現時点で世に出ている製品はその点を満たしていないものが多いからだ。そんな中、次世代のスタンダードとして本命視されている端末がある。耳を使った「イヤラブル端末」だ。

 「イヤホンはもともと日常的に使われているため、機能を拡張してもすんなりと受け入れてもらえる可能性が高い。煩わしさを感じづらいのが魅力だ」。NECデータサイエンス研究所ヒューマンセンシングTGの越仲孝文・主幹研究員は、イヤラブル端末の優位性をこう説明する。

 これまでNECは、主に顔を使った生体認証システムを研究してきた。越仲氏がその研究を通じて知り合ったのが、長岡技術科学大学の矢野昌平准教授。矢野准教授は、バーチャルリアリティー(仮想現実)空間での音響効果を研究する過程で、人によって音の聞こえ方が微妙に異なることを発見。個人の識別に使えるのではないかと考えた。その後、2人は聞こえ方の差を活用した認証システムの共同開発に乗り出した。

 開発したシステムの仕組みはこうだ。まずイヤホンを通じて特殊な電子信号(送信信号)を送り、耳の内部で反響して戻ってきた信号(受信信号)をイヤホンのマイクで収集する。耳の入り口から鼓膜までの外耳道は2~3cmの長さがあり、内壁には無数の小さな凹凸がある。この凹凸が人によって違うため、受信信号の200~2万ヘルツの音域を抽出すると、個人によって異なる形状の波長グラフを描くことができるのだ。

 受信信号には、心拍や呼吸、声など外耳道の反響音以外の音も交ざっている。これらの「雑音」を極力排除するため、1秒間に同じ信号を5回発信し、受信信号の波から5回の平均値を自動的に算出する方法を採用。その結果、「99%の精度で個人を識別することに成功した」(越仲氏)。

 NECではまず、原子力発電所などの重要インフラ設備の保守・管理や、大規模イベントの警備などでの活用を検討している。指紋や静脈、虹彩を使った生体認証の場合、手や目をかざすためのスキャナーを設置する必要がある。だが、イヤホン形式ではそうした設備が必要ない。業務用にもともと装着しているイヤホンに信号を無線で送りさえすれば、即座に常時認証でき、対象者のすり替わりを防ぐことができる。

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「イヤラブル端末、耳で個人を特定し、IC券にも」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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